研究課題/領域番号 |
24501139
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
前村 公成 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (30398292)
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研究分担者 |
又木 雄弘 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (10444902)
新地 洋之 鹿児島大学, 医学部, 教授 (60284874)
盛 真一郎 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (00620519)
高尾 尊身 鹿児島大学, 学内共同利用施設等, 教授 (80171411)
夏越 祥次 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70237577)
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キーワード | 腹腔鏡手術 / 膵胃吻合 / シミュレーター |
研究概要 |
研究の目的:腹腔鏡技術を用いた膵消化管再建術に特化した技術開発とその訓練システムを構築すること ①これまでに腹腔鏡下の膵消化管吻合再建モデルに対するオリジナルシミュレーターを用いた疑似臓器モデルの試作器を開発したが、本年度はこのモデルの改良版を用いたプログラムの作成を行った。疑似臓器は吻合方法の再現をより的確に効率よく行えるよう、膵モデルの改良やモデルへのガイド用マーキングの追加といった変更に加え、シミュレータの動画システムの改善としてフレキシブルCCDカメラとヘッドマウントディスプレイを導入し、腹腔鏡手術の再現性を向上させた。改良型の完成度はモニター被験者により評価され、膵消化管吻合用シミュレータとして有用と考えられ、本装置を用いた吻合プログラムもより改善されたものとなった。動物モデルに対しても改良を加え、腹腔鏡操作を安定して行えるプロトコルへの改変を行い、再現性の高いプログラムが作成できたと考えられた。さらにこのシステムを用いて新しい縫合針の開発に取り組み、試作モデルの作成を行った。 ②シミュレータで最適と判断された吻合法(膵胃吻合)を臨床導入するための重要な条件として、その安全性を検証した。特に新規開発した吻合法の術後の安全性ならびに創傷治癒を確認するために、ミニブタによる生存実験を行い、従来法と比較した。術後7~10日目の全身状態ならびに吻合部位の組織学的検索を行った結果、周術期の安全性および創傷治癒が良好なことを実験的に確認した。これにより本システムで開発された吻合法を安全に臨床に応用することが可能と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①腹腔鏡下の膵消化管吻合再建モデルおよびプロトコルの改良 前年度までに行った膵消化管吻合法の新規開発ならびに訓練プロトコルは試作版として構築されたが、問題点としてプロトコルの再現性が十分といえず、実用的に行うための様々な改良が必要と考えられた。その改善としてシミュレーターモデルの操作性や再現性を向上させ、動物モデルでは訓練プロトコルを円滑に進められるような手術手技の改変を試みた。これにより吻合シミュレーターモデルは吻合操作の訓練モデルとしてより適したものとなり、動物モデルは確実な生体下での操作が行えるプログラムに改善された。問題点として改良されたプログラムの客観的な検証が十分でないという点と、吻合のシミュレーションをよりわかりやすく指導または誘導が行えるようなシステムが必要と考えられた。 ②再建モデルおよび訓練プログラムの検証 再建モデルを用いて新規考案した膵消化管吻合法の安全性を動物の生存実験で検証することができた。組織学的な検証も行えたことで本術式を用いた訓練プログラムを臨床応用も前段階として導入する意義を画することができた。問題点として臨床応用に耐えうるプログラムとは言えず、訓練モデルを臨床を想定したものとするために、安全性や操作性をより高める器具や装置の開発が不十分であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で進められたモデルを用いて、操作性が良く安全性の高い膵消化管吻合法の開発に成功し改善が加えられた訓練プログラムの検証を行うことができた。今後は以下の点について進めていく。 ①膵消化管吻合(膵胃吻合)モデルをよりわかりやすく効率的に再現、指導できるようなシミュレーターの改良が必要である。現段階では文章でのマニュアルや、事前の動画説明などをもとにシミュレーションプログラムを作成している。ビデオ映像による手術手技という腹腔鏡手術の利点を生かして、模範動画と実際動画の融合により手術操作を視覚的に誘導する方法や、手術操作画像内に指導プログラムを自動で表示するといったインタラクティブな技術の開発に取り組んでいく。 ②手術操作をより平易にするような器具として、現在特殊な縫合針の開発を進めているが確立には至っていない。手術操作の問題点を様々な試作版を作成しシミュレーターでの検証を繰り返しながら、視野展開の支援器具などの新しい器具の開発を継続する。 ③本モデルを用いた訓練プログラムはモデルの改良に伴い内容が随時変更されたため、客観的な評価が十分でない。評価方法としても、より科学的に検証可能な動画システムの導入に取り組む必要がある。工学系や情報処理系との共同研究も視野に入れた推進が必要である。技術のスコア化、達成度の判定方法などを含めた評価システムの改良を進める。
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