研究実績の概要 |
本研究では,インターネットを利用して,実際に会ったことがない学習者による相互評価において,学習者が評価結果を受け入れるかどうかの判断材料の1つとして,評価者の「客観的な評価能力」及び過去の被評価者からの「主観的な評価」を組み合わせたトラスト・マネジメントツールなどを提案し,25年度までシステムの開発を行ってきた. 本研究では,評価結果を示す際、評価者の評価能力などが,個人が特定されない形で開示される.26年度は,その開示方法の検討のため,匿名性,プライバシの観点から質問紙調査を作成し,全国の大学生を対象としてインターネットによる調査を実施した.得られた2,492件の回答から,ピア・アセスメントに対する印象を分析した.その結果,匿名性が確保されたとしても,学習データが他人に知られることに敏感な者が一定数いることが確認されるとともに,これまでの学習経験,インターネットの利用経験との関連性が示唆された.システムとしては,学習者集団の属性によって,出力結果を変更できるなどの機能の実装,運用面としては,情報共有に関する説明や利用者の同意を得ることも考慮する必要があることが示された. 25年度までに検討,開発してきたシステムによって,トラスト・マネジメントの機能を実装したシステムの有効性を具体的に検討することが可能となった.26年度の調査を受けて,学習者によって懸念の強い項目の表示の有無を選択できる2種類の出力画面を用意することとした.これらにより,本研究の前提であった,面識のない者が,長期間にわたって繰り返しピア・アセスメントを利用することによる教育効果などを検討することが可能となった.今後,システムを運用した実践を行っていくとともに,実際のピア・アセスメントの状況で,実際の学習者の反応を調査し,ピア・アセスメントにおける,情報提供の在り方について,さらに検討していきたい.
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