研究課題/領域番号 |
24501158
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研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
竹内 和広 大阪電気通信大学, 情報通信工学部, 准教授 (20440951)
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キーワード | 教授法開発 / カリキュラム / 情報システム教育 / 教材開発 / コミュニケーション能力 |
研究概要 |
本研究は大学教育でソフトウェア技術者を育成する際に、企業等のソフトウェア開発の場に学生を参加させることなく、教室内での教育によってソフトウェア開発における基礎的コミュニケーション能力を錬成するための教材とその教育方法を研究することが目的である。 具体的にはソフトウェア開発の専門知識をコミュニケーションの場で運用するための方法論を明らかにすることにより、その方法に関わる知識を記述するとともに、その方法論を実現する会話の特質を会話・談話構造分析の手法を用いて研究する。この知識記述と会話例を教材として活用して、従来のロールプレイやグループディスカッション等のコミュニケーション型教育の実践方法、段階的教育方法、評価方法等における弱点を改善し、基礎能力の演習方法や評価方法を理論的に検討することにより、より効果的な教育方法を体系的に整備する。 研究2年目にあたる平成25年度は前年度の成果を踏まえ、前年度に作成した教材にもとづいて、教材会議のトピックを増やすとともに改良を加え、実施方法の改善も行った。その妥当性や課題を検討するために、前年度も実施した少人数教室の他に、通常規模の講義型授業内の演習としての実施、100名を超える大人数教室における実施、勤務校以外での専門知識が異なる学生への実施を行った。また、それらの経験者アンケートおよび実施内容の収録を題材として、情報システム開発を経験した技術者を交えて多様な視点から分析・評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度前半は、前年度である平成24年度後半に作成した教材とその実施について、コンピュータシステム開発経験をもつ技術者との会合を原則毎月開き、様々な観点からの意見収集を行った。その結果、会議トピックをより体系的に広げられないかとの指摘があり、また、実施例が少人数教室のみの実績のみであることから、社員研修を含む、多様な授業条件下での実施例を収集することについて提案があった。 前者の指摘は、システム開発業界で一般的な資格として認知されている情報処理技術者試験や市販されているソフトウェア工学分野の教科書例題と、教材の会議トピックとの連携を強めることが、授業内実施の汎用性高め、実施対象を広げる可能性があり、学生に対する評価もより行いやすくなるとの指摘である。平成25年度はその指摘に則して、教材の修正および追加を行った。 後者の提案については、教材開発者以外でも円滑に授業実施できるように、授業実施の準備や前提となる教示が軽減されるよう、「事例カード」「会話例集」を少量かつ簡潔な提示資料にする改良・工夫を行った。 以上の指摘や提案に対応して教材の改良・修正を行い、それに基づいて、平成25年度後半期は前年度も実施した少人数教室の他に、通常規模の講義型授業内の演習とした実施、100名を超える大人数教室における実施、勤務校以外での専門知識が異なる学生への実施を行った。この実施結果については、今までのようなインタビュー形式ではなく、情報システム開発経験者を交えて会話・授業結果のデータレビューを行い、現時点での教材の有効性を確認するとともに、教材の有用性や学習効果の評価を行い、今後の課題を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、単に教材の改良と実施経験が蓄積できただけはなく、理論・学術的な側面から見て2つの大きな進展があった。この実績を踏まえ、平成26年度はさらなる教材改良、授業実践、評価方法開発といった教材開発研究だけではなく、今後の情報技術者教育の基盤構築につながる研究を行っていく予定である。 具体的に述べると、1つは、教材トピックの題材をシステム構築経験者からの要望により、情報処理技術者試験や既存の教科書のシステム題材との対応付けを行ったことにより、柔軟に議論トピックと他の学習課程と連携するためには、経験値の集合体である過去の試験問題や文書、プログラムソース等々のリポジトリに対して、データ・テキストマイニング手法を適用することが重要な課題であることが認識した点である。この点は、「事例カード」として教材中で提示する情報システム開発の記述を、他の講義科目や授業カリキュラムとより有機的な結びつきをもたせるための基礎となり、本研究課題の目的の一つである、経験知を記述・体系化した教材を作成する上で重要な課題であるため、さらに継続して研究を進める予定である。 他方は、「会話例集」をより授業内で扱いやすくするために、企業研修等で用いられるコミュニケーションゲームの方法論を導入したところ、具体的な会話例を用いて逐一例示や教示をしなくても、工夫を行えば目標となる会話技法を自律的かつ効果的に統制することが可能であることが判明した点である。この点も、本研究の目的である、情報システム教育の段階的錬成に適応するように単純化した疑似会議を設計する理論・技術として重要であるため、さらに研究を進める予定である。 また、研究最終年度となる本年度の研究が終了した段階で、教材開発としての成果は、授業実施の参考となるようWebページに教材セットを公開する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
近年の私立大学の入学者の多様化により、学内業務が予想外に増大し、また、想定外の学生への対応が必要となっているため、研究出張や研究的会合への参加が非常に制限されてきていることが現状である。そのため、学会参加や研究協力者へのインタビュー等の旅費使用が当初計画よりも少なくなった。また、専門家からの情報収集は、予想外に無償の協力が得られ、謝金の支出を抑えられた。 近隣の十分な経験をもつシステム開発経験者により、分析や彼らに対してのインタビューについて無償で協力を得ることでき、当初計画よりも、データや資料収集をより学術的な方向で行うことが出来ている。このことにより、現在の進捗では、単なる口述による経験知識が蓄積できただけではなく、相当数の文書型のデータを蓄積でき、教材開発や研究の基盤となる基礎的な課題について着手できたことから、より精緻な研究を行う上でのデータ整備、プログラム開発の課題が明確になってきた。 以上のような状況から、研究の成果発表および研究遂行に必要な情報交換のための旅費と、より高度な分析・開発のためのデータ整備及びプログラム開発のための謝金・人件費を計上したい。
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