研究課題/領域番号 |
24501161
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 大阪成蹊大学 |
研究代表者 |
浅井 宗海 大阪成蹊大学, 経営情報学部, 教授 (90511816)
|
研究分担者 |
島田 知子 大阪成蹊大学, 経営情報学部, 助手 (00626319)
中井 秀樹 大阪成蹊大学, 経営情報学部, 准教授 (60330065)
稲村 昌南 大阪成蹊大学, 経営情報学部, 准教授 (70320009)
千代原 亮一 大阪成蹊大学, 経営情報学部, 准教授 (80411742)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | PBL / ふりかえり学習 / ビデオ記録 / コンピテンシーディクショナリ / ジェネリックスキル / 国際情報交換 / アメリカ合衆国 |
研究概要 |
本研究は、PBL(Project-Based Learning:プロジェクト型学習)を使ったジェネリックスキルの育成において、自己の行動事実に関する再現性のある情報を用いて、学生に学習後の「ふりかえり」を行わせることにより、学習者の自己評価の精度と自己評価力を高める仕組みを構築する。それと共に、「ふりかえり」から導き出された行動特性に基づき、評価の客観性を高めるコンピテンシーディクショナリを作成することを目的とする。以上を達成することにより、PBLの繰り返し学習の中で明確な目標設定を行い、この評価の仕組みによって目標達成に対する評価精度を向上させ、ジェネリックスキルの積み上げ教育を実現することを目指すものである。 本研究の1年目である平成24年度では、大学2、3回生を対象にPBL形式での授業を実施し、その中で、PBLでの学生の様子をビデオ撮影し、PBLに対する「ふりかえり」において、明確なエビデンスとしての再現性あるビデオ記録を使って自己評価を行わせるといった実証実験を行った。その際、同一被験者に対して、ビデオ記録を使わない「ふりかえり」と使った「ふりかえり」を行わせ、アンケート結果によりビデオ記録の有効性を確認することができた。この結果を受け、ビデオを使った「ふりかえり」を支援するために、ビデオアノテーション機能を有した支援システムを開発した。このシステムにより、ビデオ視聴時に評価すべきと感じた場面の評価内容を、ビデオに連動して書き込むことができ、又、その書込を何度でもビデオ再生によって確認することのできる仕組みを実現した。また、評価の指針となるコンピテンシーディクショナリと尺度となるルーブリックの素案を作成し、これらを使った自己評価の実験も開始した。このように、本年度は、研究目標を達成するための準備活動が概ね完了した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の実施期間である3カ年の当初計画は、1年目に、PBL形式での授業を実施し、その後の「ふりかえり」で、明確なエビデンスとしての再現性ある情報(ビデオ記録)を学生に提供し、STAR法を用いた「ふりかえり」による自己評価の精度向上を検証するというものであった。 この計画に基づき、1年目である本年度(平成24年度)は、大学2、3回生を対象にPBL形式での授業を繰り返し実施し、各PBL後にSTAR法を用いた「ふりかえり」による自己評価を実施し、学習結果に関するデータを蓄積することができた。併せて、PBLでの学生の様子をビデオ撮影し、「ふりかえり」において、明確なエビデンスとしての再現性あるビデオ記録を用い、PBLにおける具体的な学習活動を視認できる形での自己評価を行わせる実証実験も行った。このように、当初計画で予定していた研究活動(実証実験)を順調に実施することができた。 また、上記の結果から、PBLの繰り返し学習によって、各学生のコンピテンシーに対する自己評価結果が平均的に向上しているという結果を得た。併せて、「ふりかえり」でのビデオ利用の有効性を確認することもできた。しかし、当該学習を繰り返すことによって、学生の自己評価精度が向上したかを客観的に検証するには至っていない。このため、現在、検証方法の検討を行っており、この点については次年度での達成を目指すべく努力している。以上のことから、本研究は、おおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の当初計画では、次年度(平成25年度)以降に、①PBL形式での授業とビデオを使った「ふりかえり」についての継続的な実証実験の実施、②コンピテンシーディクショナリとルーブリックの開発及び利用の検証、③書込ログを用いたPBLでの「ふりかえり」の実証実験、④学会などでの中間報告及び意見交換、⑤オレゴン大学のアクティブラーニングや教育支援システムに関する調査及び意見交換、⑥同一被験者に対して繰り返し実施したPBL活動の検証を通じての積み上げ教育の構築、⑦研究成果の論文等での公表及び本研究の報告書の作成という7項目が予定されている。この計画に従って、次年度は①、②、③、④を、翌年度は①、⑤、⑥、⑦を実施する予定である。 このため、次年度以降も、実証実験に伴う設備・消耗品等の費用、学会への参加に関わる参加費・旅費等、海外調査に関わる旅費等、論文や報告書に関わる資料購入費や印刷・発送等の費用、研究協力者との打合せに掛かる旅費等が必要となる。 ところで、上記計画の中で、③書込ログを用いたPBLでの「ふりかえり」の実証実験は、チャット機能を使ってPBLの討議を行い、明確なエビデンスとしての再現性ある文字記録を収集するといったものであった。しかし、チャットを使ったPBLという学習活動の現実性(授業運用として現実的ではないという点)に疑問が生じたため、エビデンスとしての文字記録の有効な活用方法を検討し、研究方法を変更することにした。その方法は、ビデオアノテーション機能を使ってビデオ記録に文字記録を追加することで、学生の「ふりかえり」での明確なエビデンスとしての再現性ある情報として、ビデオに連動した文字情報を、学生に提供するというものである。したがって、③の研究内容をより現実性のある実施方法として、③’ビデオに連動した文字記録を用いたPBLでの「ふりかえり」の実証実験を行うこととする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度(平成25年度)は、①PBL形式での授業とビデオを使った「ふりかえり」についての継続的な実証実験の実施、②コンピテンシーディクショナリとルーブリックの開発及び利用の検証、③’ビデオに連動した文字記録を用いたPBLでの「ふりかえり」の実証実験、④学会などでの中間報告及び意見交換という4項目を実施する。 このため、次年度は、①及び③’の実証実験に伴う設備・消耗品等の費用として約210千円、④の学会への参加や研究協力者との打合せに掛かるに旅費・学会参加費等の費用として約300千円、合計で510千円の使用額を予定している。
|