本研究の目的は,専門的知識を前提とせずに論理的思考力や問題解決力などの知的能力を測定しようとする問題に関して,正誤や解答方略と関連の深い能力についての知見を得ることである. 今年度は,高校の数学では扱わない三面図(正投影図)を含む多肢選択問題に関して,誤答傾向やセンター試験の得点との関連を分析した結果をまとめて,第16回International Conference on Geometry and Graphicsにおいて口頭発表を行った.三面図の見方に関する説明を補足した上で構成面の表面積を問う問題を大学1年生に解答させたデータの誤答傾向からは,三面図の中で線分としてしか表現されていない面の存在を与えられた図から読み取って形状を把握するのが難しいことが示された.三面図の問題の正誤は,センター試験の数学得点と有意な関連がみられたが,特に,すべての構成面が異なる形状である立体の三面図が与えられた問題では,その傾向が強かった.図の読み方を理解して形状を把握する能力と,数学の学力との関連が強いことが示唆された. 空間テストで測定される能力と大学での図学関連教育の関係をテーマに開催された日本図学会第51回図学教育研究会「図学関連教育と空間認識力-切断面実形視テスト(MCT)を中心に-」においては,これまでの研究成果をもとに,知能における空間認識力の位置づけの変遷についての話題提供を行った.話題提供の内容は,図学研究48巻2・3号に「報告」として収録された.
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