研究課題/領域番号 |
24501172
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
和田 裕一 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (80312635)
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研究分担者 |
窪 俊一 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (50161659)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | コンピュータ・リテラシー / 高齢者 / 態度 |
研究概要 |
本研究は,高齢者のパーソナルコンピュータ(以下,PC)使用に対する態度や,操作上のつまずきの特徴を分析することで,高齢者ユーザーのためのわかりやすいPC 操作インストラクショナルデザインの設計指針を提案し,その効果検証を行うことを目指すものである。 平成24年度では,個々のユーザーの好みや嗜好に適合したインストラクショナルデザインのあり方を明らかにするために,PC使用に対する高齢者の態度とその他の種々の心理特性との関連性について調査を行った。具体的には,PCを高齢者が利活用することで,PC操作スキルやPC態度といったPC利活用と直接関連すると考えられる要因と,個人の考え方の好みや傾向を反映する思考スタイルや自己効力感,対人関係といったヒューマンスキル要因,そして高齢者の生活の質(QOL)といった要因が相互にどのように影響し合っているかについて,インターネット調査の結果から探った。その結果,高齢者のPC利活用は,PC態度といったPC利活用と直接関連すると考えられる要因だけでなく,自己効力感や対人関係といった一般的なヒューマンスキル要因,そして, QOLを構成する要因にもポジティブな影響を及ぼすことが示唆された。 また,高齢者がコンピュータを使いこなすために重視している要因にはどのようなものがあり,それは他の世代のユーザーとどのような点で異なっているかについて調べるために,20代-60代以上のPCユーザーを対象として,コンピュータを使いこなすために必要な要素と考えられる15要素間の関連と影響について尋ね,構造化分析手法であるDEMATEL法を適用した分析を行った。その結果,コンピュータを使いこなすために必要な要素に対する各世代の認識の差異ならびに高齢者PCユーザーの特徴を定性的に示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究目的は,PC使用に対する高齢者の態度と思考スタイルとの関係を明らかにすることで,個々のユーザーの好みや嗜好に適合したインストラクショナルデザインのあり方を検討するというものであった。 先述の「研究実績の概要」に記したように,上のことを検討するためにこれまでに複数回の質問紙調査を実施し,データの収集と大枠でのデータ分析は終了しており,現時点での達成度は概ね順調であるといえる。 ただし,主要な研究目的であるPC利活用に対する高齢者の態度と思考スタイルとの関係については,得られたデータを概観した結果,まず今回用いた思考スタイル尺度それ自体の妥当性や信頼性について検証する必要があると判断された。これらの予備的検討に時間を要しており,思考スタイルが関連する分析についてはまだ十分に吟味できておらず,解析を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は「高齢者のPC操作の“つまずき”分析」をテーマとして,高齢者のPC操作の様子とそこでのつまずきの内容を詳細に記録,蓄積していくことで,操作上のつまずきの原因やつまずきが生じる前後のPC操作の因果関係を精査し,高齢者のPC操作の特徴や傾向を把握することを目指す。また,初学者がPC操作を学習し操作スキルが向上していくにつれて,PC操作に対するメンタルモデルがどのように変化していくかについて,理解度テストや主観評価から検討する。 本調査の実施にあたり,高齢者向けのPC講座を開講し,そこでの受講生に調査への協力を依頼する。同意が得られれば,何名かのユーザーの視線移動やストレス指標等の生理指標も計測したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額(879,250)の主な使用用途は,高齢者向けのPC講座を実施する上で必要となる機材等(講習で使用するPC機器、ソフトウェア各種,モバイルネットワーク端末等)とPC講座開講のための環境整備費(資料印刷代,通信費等)である。PC講座実施にあたり当初の計画で予定していた会場ならびにそこでの現有設備の使用が難しい状況となったため、急遽新たな実施場所と機材の確保が必要となった。そこで今年度は当初予定していた執行計画を一部変更し、PC講座実施のための諸経費に充てることとした。 これには、PC講座の受講生が使用する機器やソフトウェア等ならびに、受講生の学習成果の記録に必要となる機材や分析用ソフトウェアが含まれている。 また、PC講座の参加者のデータのみでは定量的な分析に十分ではないため、高齢者PCユーザーを対象とした調査を実施することを予定している。ここでは、高齢者のPC操作のつまずき事例の収集を目的としたインターネット調査を行う。
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