歯科治療において修復物によって歯冠形態を回復する場合には、齲蝕などにより崩壊した歯質の形を整え(歯冠形成を行い)、正確に型を取る(印象採得を行う)ことが必要不可欠である。これらは様々な歯科材料を用いて行われるが、優れた性能を持つ材料を使用したとしても適切に材料を扱うことができなければ治療精度を上げることはできない。特に比較的短い時間のうちに硬化を開始する印象材料は、扱いに術者の慣れを必要とし、正確な印象採得を行うためには材料の流れや初期硬化のタイミングを計りながら使用することが求められる。さらに、印象採得の対象となる口腔内は生体の他の部位に比べて狭小であることに加え、唾液によって絶えず湿潤しているため、シリコン系の印象材を用いる場合には確実に防湿を行うことが重要になる。また、精密な印象採得を可能にするシリコン印象材は、印象精度を高めるため、硬化前には高い流動性を有する。このような性質は微細構造を再現する際には非常に有用である反面、対象となる場所(口腔内)以外に付着した場合には除去が困難となる。すなわち、臨床現場においては、患者の衣服を汚さないように十分配慮する必要がある。したがって、シリコン印象材を用いて印象採得を行う場合には、目的の場所以外に付着させないように口腔内へ材料を運ぶ際にも注意を要する。平成26年度は、前年度に作成したシリコン印象採得に関する動画教材の教育効果をさらに検証するために、引き続き研修歯科医を被験者として本動画教材が印象採得の技術向上に与える影響を調査した。
|