(調査1)研究2年目に開始した「教材となりうる素材に出会った場面での素材記録」調査を継続した。中学校数学1事例,小学校道徳2事例が収集され,どのような教材化を試みたかについてのインタビュー調査を実施した。その結果,中学校数学科教師の教材開発活動では,素材に含まれる属性(波→パターン)に着目した後,中学生が取り組むことが可能な問題場面の開発のために,素材を変換する過程が認められた(波→電車模型→抽象的なボールの動き)が,小学校教師の道徳の教材開発活動では,素材の変換活動は観察されなかった。教科による特性の影響が想定されるが,前年度までの理科・家庭科教師の教材開発活動の結果と合わせて考えると教師の教材開発過程は概ね,(1)学習者の学習活動やつまずきに関する知識の豊かさ,(2)教科内容に関する知識の豊かさ,(3)身の回りに存在する多様な素材の特性に1と2の観点から意味づける能力(素材選択過程),(4)選択した素材を授業過程に位置づける能力(学習活動設計過程),という4要素から構成され,(1)(2)は教師の既有知識,(3)(4)は既有知識を活用する水準になる。この要素に基づき,暫定的なルーブリックを構成した。 (調査2)教師の教材開発能力の要素中,素材に意味づける能力,選択した素材を授業過程に位置づける能力は,教師が既有知識を応用する能力と見なせる。従って,既有知識を応用しやすい情報の提供は,教材開発活動を活性化させるはずである。研修プログラム開発にあたり,タブレット端末などの新ICTツールを授業で活用する際の,既有知識活用のための効果的な情報提示方法の効果を検証した。その結果,既存の授業設計に関する知識を応用するためには,授業実践事例の授業展開に沿って,既有知識と新ツールの対応情報を提供することが,一定の効果を示すことを指摘した。
|