研究課題
本研究は,児童について教員が分析を行い,コメントを記入するという形でフィードバックする教育実践を対象としている.その中で,各教員に応じた支援を実現するテキストマイニング等の活用方法について検討することが研究目的である.期間初年度では,ブログ型学習環境を想定した児童の自由記述文書を学級担任が校正し,辞書を用いた自然言語処理で抽出した単語から,日本語シソーラス等の言語資源を用い,教員の観点等に繋がる関係の抽出を試みた.その結果,児童の文書のみでは教員支援に十分な情報が得られず,外部知識源として,教員が児童について記述した文書が必要との結論に至った.次年度では,教員が児童について自由記述した所見文書から,個人情報等を削除した上,出現単語やその頻度等のみとなったデータを分析した.その結果,記述教員等の属性データに応じて比較することで,有用な情報を抽出可能なことが確認でき,成果を口頭発表した.最終年度では,記述者である教員の支援という観点で整理した.教職経験を積み何度も所見を記述していると,パターンが固定化して単語のレパートリが広がらず,偏りが生じやすくなる.このような記述の偏りとして,他の教員と比較して特に多用しがちな特徴的な単語があるため,テキストマイニングを用いた所見の教員間比較から特徴単語を抽出した.現職教員に対する実験を実施したところ,特徴単語の活用が所見記述を支援することが示唆された.これらをまとめて投稿し,学会論文誌への採録が決定した.所見は児童だけでなく保護者向けにも書かれているが,教員が自由記述して児童へフィードバックする文書という点で,ブログ型学習環境において記入されるコメントと同様である.特徴単語は,各教員の特徴的観点を反映しており,それに応じた記入支援が可能である.当初の想定より広範囲に応用可能な重要で意義ある成果が,科研費で行われた本研究により得られた.
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
日本教育情報学会誌「教育情報研究」
巻: Vol.30, No.3 ページ: 23-35