本研究は、学校教育における一斉授業の中で「個に応じた指導」を実現する一つの方法として,米国で提唱されている「学びのユニバーサルデザイン(Universal Design of Learning;以下UDL)のアプローチを援用した授業設計法の提案をめざすものである。 初年度(平成24年度)は,「個に応じた指導」に関する学校現場の実態調査と授業設計に影響する要因の整理,並びに,UDLアプローチを援用した授業設計の枠組みの検討を行った。昨年度(平成25年度)は,前年度検討した設計枠組み案を用いて,実際に小・中学校及び高等学校で計4教科の授業の設計と実践を試行し,その評価を行った。実践対象となった児童生徒への意識調査の結果,設計枠組みに基づき各授業で取り入れた種々の手立ては概ね有用であるとの評価が得られ,UDLアプローチを援用した今回の授業設計が,授業のプロセスに対する肯定的な評価につながったものと思われた。 最終年度(平成26年度)は,昨年度の意識調査では明らかにされなかった学力面への客観的な効果を検証するとともに,今回の授業設計による学習への効果及び学習者の意識を詳細に捉えるため,事例分析的な検討を加えた。学力面については,達成度テストの成績で若干の向上傾向が見られたが,顕著な伸びは認められなかった。また,複数の抽出児童を事例とした分析では,授業に対する肯定的な評価は得られたものの,授業内容の理解度に関する本人の認識と達成度テストの成績とが整合しないケースもあり,継続的な取り組みと検証の必要性が示された。 以上を総括し,最後に,一斉授業場面を対象とした,UDLアプローチを援用した授業設計モデルと今後の課題をまとめた。
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