研究課題/領域番号 |
24501215
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
渡邊 博之 日本大学, 工学部, 教授 (40147658)
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キーワード | SCORM / LMS / 繰り返し学習 / コースウェア / 学習時間 / MTシステム / SN比 |
研究概要 |
研究課題に関して,平成25年度は次の研究成果を得ることができた。 (1)前年度までのSCORM対応型LMSは,PCの利用者を対象に開発したため,スマートフォンやタブレットなど,アプレット機能を有していないモバイル端末では利用することができない問題点があった。そこで本年度は,アプレット機能に依存しない,かつこれまでに作成されたコースウェアを変更することなくPC以外のモバイル端末でも利用可能なSCORM対応型LMSプログラムを開発した。 (2)前年度はCプログラミングの選択式コースウェアを作成した。本年度は,更に様々なコースウェアを利用できるよう,新たに自由記述式英語の繰り返し学習型コースウェアを作成した。 (3)前年度は仮想教員グループを用いて単位空間を作成し,MT(マハラノビス・タグチ)システムを用いて学習データを分析した。しかし,メンバシップ関数を用いなければならない問題点があった。そこで本年度は,合格点に到達した最終の学習時間を用いて単位空間を作成し,選択式と自由記述式の各コースウェアにおけるマハラノビス距離の特徴を明らかにした。また,SN比を求め,MTシステムにより学習時間を長引かせる問題項目を明らかにした。 (4)繰り返し学習型演習問題のコースウェアを対象として,本年度は新たに,単純加算のクレペリン学習過程における回答中の脳波(定常状態)を測定した。学習中の脳波をノンパラメトリックなFFT法と,パラメトリックな自己回帰モデルで分析した。回答数と周波数含有率との関係を明らかにし,結果の妥当性を両手法によって示した。また,自己回帰モデルから,モデル次数が低くなるとクレペリン作業の平均回答数が高くなる傾向を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究目標は「前年度までに開発したLMSの運用によって,課題や問題点を明らかにする。また,LMSの運用によって得られる学習者のデータを分析する」ことである。これに対して,具体的には次の展開を行い,各研究成果を学会などで発表したが,課題も残されたため「おおむね順調」とした。 (1)前年度までに開発したLMSでは,アプレットが利用できないブラウザではコースウェアが利用できない問題点があった。これらの問題点をブラウザを用いる方法とアプリを用いる方法の2通りによって,従来のPCに加え,モバイル端末でも学習可能なLMSを開発した。しかし,モバイル端末でのSCORM対応化は一部の機能に限定されるため,どのようなコースウェアでも対応できるようにすることが今後の課題である。 (2)前年度はLMSの運用によって得られた繰り返し型コースウェアの学習データ(学習時間)をMTシステムで分析した。しかし,単位空間を仮想教員の学習時間で作成しなければならない問題点があった。この問題点を解決するため,合格点に到達した最終の学習時間を用いて作成する方法を提案した。また,LMSの運用によって得られる選択式と自由記述式の各コースウェアの学習時間をMTシステムで分析し,各コースウェアの特徴を明らかにし,学習時間を長引かせる要因を明らかにした。しかし,作成した単位空間の妥当性を検証する必要があり,得られた結果が普遍的であるかを様々なコースウェアで検討することが今後の課題である。 (3)繰り返し学習型コースウェアの学習データのモデルとしてクレペリン作業を対象に,回答過程における脳波をノンパラメトリック法とパラメトリック法の2通りで分析した。しかし,脳波は個人差が大きいという問題点が明らかになった。多くの学習者について個人差の無い普遍的な結果は何であるかを検討することが今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究計画は「LMSを用いることによってC言語及び英語の各コースウェアを運用し,サーバに蓄積された学習データの分析を行う」ことである。このため,平成25年度に得られた新たな課題に対して次の研究を進める。また,最終年度であるため,作成したコースウェアを広く国民が利用できるようにホームページ上で提供すると共に,学会や研究会,国際会議を通して研究成果を公表する。 (1)PCが利用できない環境では,スマートフォンや携帯電話などのモバイル端末を用いることによって学習の継続を可能とする。特に,平成25年度に課題となったSCORM対応化の機能を拡大し,どのようなコースウェアでも対応できるようにする。また,モバイル端末が利用できるシステムでは,コンテンツはPCとモバイル端末とを個別に作成することなく利用可能なシステムを開発する。 (2)初年度は選択式コースウェアを作成し,次年度は自由記述式コースウェアを作成した。最終年度はそれらを組み合わせることによって,学習者の学力向上を効率よくステップアップできるコースウェアを作成する。また,ランダム出題などの英語学習用コースウェアを作成し,課外講座や実際の授業で運用することによって,学習効果を評価する。 (3)プレテストとポストテストにより,LMSの利用による学習効果を分析する。また,MTシステムの分析において,作成した単位空間の妥当性を検証する方法を考え,得られた結果が普遍的であるかを様々なコースウェアで検討する。 (4)コースウェアの回答中における脳波について,制限時間を設けない場合と設けた場合について,得点や誤答数に及ぼす影響を検討する。また,個人差の無い普遍的な結果は何であるかを検討する。
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