本年度は次の2件の研究を中心に論文発表を行った。 (1)前年度までによって,コンテンツの再利用・共有とLMS(学習管理システム)の相互運用とを兼ね備えたSCORM対応のLMS(学習支援システム)を開発してきた。本年度はLMSを運用するために,語学力強化を目的として2つのコースウェアを開発した。一つは四択式の中から正答を選ぶ英単語の選択式問題である。もう一つは英文法を記述式で回答する問題形式である。合計1000問近いコンテンツをデータベースに登録した。(これらの成果は国際会議タイTESOL2015で発表した。) (2)eラーニングでは合格点に到達するまでの学習時間が評価の対象となる。従来の研究では,任意の問題項目で構成されるコースウェアの学習時間の推定はできない問題点がある。本年度は,これらの問題点を解決するため,品質管理の分野で用いられているMTS(マハラノビス・タグチ・システム)の教育工学への適用を提案した。すなわち,繰り返し学習型の選択式(英単語)と記述式(英文法)の各コースウェアを対象に,それぞれ90%以上と80%以上で合格点に到達した繰り返し最終の学習時間を用いて単位空間を作成し,MTSに適用して分析した。分析の結果,選択式では短時間に回答できるため,学習者数は徐々に減少するが,繰り返し回数が多いために長引き,その要因は主に熟語であることを明らかにした。また,直交表を用いてマハラノビス距離からSN比を求め,学習時間を長引かせる問題項目を明らかにし,任意の問題項目で構成されるコースウェアの学習時間のSN比を推定した。一方,記述式では長引かずに学習時間の短い学習者と長い学習者に2分化され,学習者は主に過去形を苦手とする傾向を明らかにした。(これらの成果は電子情報通信学会論文誌Dの2015年1月号「多様化する学習・教育支援論文特集」で発表した。)
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