研究課題/領域番号 |
24501220
|
研究機関 | 相模女子大学 |
研究代表者 |
加藤 由樹 相模女子大学, 学芸学部, 講師 (70406734)
|
キーワード | モバイルラーニング / 携帯電話 / モバイルデバイス / 感情 / テキストコミュニケーション |
研究概要 |
本研究課題の目的は、携帯電話を利用したモバイルラーニングについて、特にデジタルネイティブの特徴に注目して検討を行うことである。従来のモバイルラーニングに関する研究は、主として“いつでもどこでも”学習できるデバイスとして携帯電話などのモバイルデバイスを捉えられてきた。もちろんこれはモバイルラーニングの最大の特徴といえる。しかし、特に現代のデジタルネイティブにとっては、モバイルデバイスは、彼らの分身であるパーソナルなメディアであり、感情コミュニケーションのメディアでもある。以上を踏まえて、本研究課題の構想は、学習者の感情面を支援するために感情の伝達やコントロールを行うメディアとして携帯電話を位置づけ、学習者が意欲的に学習に取り組めるモバイルラーニング環境を提案することである。 平成25年度には、大学生を対象にしたアンケート調査を中心に行った。アンケート調査では、携帯電話やスマートフォンなどのモバイルデバイスの使用状況に加えて、当該年度は特に、彼らの主な生活場所である大学におけるモバイルデバイスの利用に注目した。具体的には、モバイルデバイスの利用場所や状況について細かく調査した。例えば、大学の教室における授業中のモバイルデバイスの利用や、対面での友達や教員との会話中のモバイルデバイスの使用などであった。これらの調査の主な結果は、デジタルネイティブ世代の大学生にとって、特にメールやLINEなどの文字のやりとりによるテキストコミュニケーションにおいて、メッセージの受信確認や返信のスピードが重要であり、これらのコミュニケーションに関する制約が発生した場合に、彼らの感情面への負の影響が大きい可能性が示唆された。すなわち、彼らにとって、携帯電話などのデジタルデバイスを彼らの身体から遠く引き離すことは、心理面へのネガティブな影響があることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題の期間中に継続的に行う調査としての携帯電話、スマートフォンなどの所有率やアプリ、その他の機能の使用頻度などについては、毎年度同様の調査を行っていく予定であるため、この調査は、基本的には4年間同じ項目を使用するものであり、平成24年度に質問項目は完成した。しかし、それ以外の項目については、その時々のトレンドに関する項目も適宜入れて調査を行う。 平成24年度の分析でわかったことは、デジタルネイティブの世代の多くの大学生は、はやいやりとりを軸にしてテキストコミュニケーションを捉えていることであった。平成24年度の結果を踏まえ、平成25年度は、デジタルネイティブについてより追求した。大学生を対象にして、大学の教室における授業中のモバイルデバイスの利用や、対面での友達や教員との会話中のモバイルデバイスの使用など、モバイルデバイスの利用場所や状況について細かく調査した。また、平成24年度に行った分析結果を、米国の出版社であるIGI GlobalのBook Chapterにまとめたり、日本教育情報学会の論文誌に投稿し採録されたりした。更に、大学において、授業の課題の提出方法について、デジタルデバイスの利用を探る実践的な試みも行った。加えて、モバイルデバイスを用いたテキストコミュニケーションについて統制された条件下でやりとりを分析するために、実験を実施した。 本年度の調査、実験、実践からわかったことの主な一つに、現代のデジタルネイティブ世代の大学生の多くは、さまざまな電子メディアが利用できる環境においても携帯電話やスマートフォンといったモバイルデバイスをより選択する傾向があることである。この結果を踏まえ、次年度以降に行う調査、実験の大枠が固まってきた。以上の理由から、「おおむね順調に進展している」と回答した。
|
今後の研究の推進方策 |
26年度は、24年度から25年度の間に行った調査や実験、実践についてまとめ、論文執筆、論文誌への投稿にも、前年度まで以上に時間を割く予定である。 また、継続的な調査および実験を行う。しかし、注目する細かい視点やアンケートの項目については、次年度以降完全に一貫することはしない。もちろん、研究期間である4年間の推移を調べるために、いくつかの固定した項目は存在させるが、一方で、新しい視点、項目をどんどん追加する。例えば、LINEと呼ばれるコミュニケーションツールの普及が著しい。それによってコミュニケーションの仕方も変化していくことは当然考えられる。本研究では、4年間の変化について、当該年度である初年度に決めた視点だけにとらわれず、新しい機能、ツールなどとのデジタルネイティブの関わり方について見ていく。最後に、本研究課題の最終目的はモバイルラーニング支援である。基礎的な調査が中心の本研究であるが、学習との関係に関する検討は今後の研究では徐々に占めていく。 (次年度の研究費の使用計画) 次年度は、海外旅費を使用する。科研費で行った研究知見を国際的に公表することの意義は大きいため、ED-MEDIA2014で口頭発表を行う。また、国内旅費については、前年度と同様、教育工学関連や心理学関連の全国大会や研究会での発表、意見交換のために活用する。設備費については、次年度は、タブレット機能のあるパソコンやモバイル端末などの機器の購入を考えている。また、調査用に撮影機器の購入も予定している。更に、海外での論文公表のための英文校正などや、システム開発のための専門的知識の経費も予定している。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当該年度に使用を予定していた国際会議への参加のための旅費及び参加費について、当該年度に国際会議での発表ができなかったため。 次年度には、フィンランドで開催される国際会議ED-MEDIA2014に参加し、研究発表をすることが決まっている。この国際会議への参加費及び旅費として使用する計画である。
|