研究課題/領域番号 |
24501223
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
佐藤 慎一 日本福祉大学, 国際福祉開発学部, 准教授 (10410763)
|
研究分担者 |
影戸 誠 日本福祉大学, 国際福祉開発学部, 教授 (50351086)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 教育工学 / ソーシャルメディア / Project Based Learning / ポートフォリオ |
研究概要 |
大学における正規科目として実践しているプロジェクト型学習(PBL: Project-based Learning)実施期間中に、学生が学外ソーシャルネットワーキングサイト(SNS)をどのように活用しているか、その実態調査を行った。近年、学生の多くが利用しているFacebook、および、Mixiを対象とした。また、学内SNSの利用状況の経年的な変化についての分析も行った。複数の協力者からデータを収集の上、活用の実態を分析し、アンケート調査・分析結果とともに、PBLとの連携方法を検討する際の基礎とすることを目指した。 分析の結果、PBLにおけるSNSのフォーマルな活動は継続的に行われているものの、インフォーマルな投稿は減少傾向にあり、FacebookやMixiなどの外部SNSに移行していることがうかがわれた。また、そのインフォーマルな投稿が、学内SNSに投稿されていたものと、外部SNSに投稿されるものとでは、大きく2つの点で異なることに着眼した。具体的には、<(1)外部SNSでは、学内SNSで行われていたよりもはるかに頻繁なやり取りが行われている。(2)一方で、外部SNSへの投稿内容はシンプルで短いものがほとんどであり、学内SNSにおいてみられた、PBLに関する自らの(長い)投稿はほとんど見られない。>ということである。 先行研究等より、(1)は、PBLに取り組む学生同士、お互いの状況を日常を含めて共有することで、協働作業において有効に作用するであろうと分析した。(2)で減少した投稿は、体験型の学習時に重要とされるリフレクション(振り返り)を、より深く着実に行うために有効と思われるものであった。これら現状分析を踏まえ、学内外のSNSを活用した学習環境デザインについての考察を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実践的な研究であるため、ソーシャルメディアをとりまく環境の変化などを受けて、調査対象・調査方法を流動的に考えていく必要がある。しかし、ここまでの研究は実態把握が中心であるため、研究計画遂行上の流動性も少なく、順調に進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
PBLの実践と、そこでの学内外のSNS活用状況と調査・分析結果を踏まえて検討した改良版の授業デザインに基づき、継続してPBLを実践する。また、学外SNSでの活動実態を分析した次のステップとして、学外SNSでの活動やそこに残された記録を、大学の公式な学習の振り返り、及び、ポートフォリオの整備に活用する取り組みを試行的に開始する。多様な人々とのコミュニケーションの中で、自らの体験を多角的に捉え、深い振り返りが行われることを仮説として実践とその評価・分析を行う。体験したことに対する振り返りの深まりについては、学内外のSNSへの投稿、レポート等、学生からアウトプットされた情報を分析した上で、評価の観点を明確化していく。 PBLなどを通じて身につくと期待される汎用的な力を学習者自身が実感することは難しいと言われているため、その支援にも取り組む。「PBLでどのような力を身につけたか、具体的な体験を例示しながら、学習者自らが適切に説明できること」を目標とし、具体的には、各SNS上の記録を適宜参照しながらポートフォリオを作成することを通じて、学びとそこで獲得できた力を整理することを試みる。ここでは、公式、非公式な各種活動の中でアウトプットされる情報の適切な管理方法について、活用するツールを含めた具体的なガイドラインとして整備することを念頭に取り組む。 また、一般的に、非公式な活動で発生している学びを学生自身が認識することは難しく第三者の支援が必要であると言われている。従って、10名程度の学生を対象として教員からも支援を意識的に行い、学生の自律性に委ねる部分と教員が介入すべき部分についての知見を蓄積する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
スマートフォン、タブレット、および、活用の基盤となるネットワーク環境の進歩はめざましい。タブレット端末のユーザインタフェースも洗練され、単なる性能向上にとどまらず、情報環境の新たな活用スタイルが生み出されつつある。こうした新たな活用形態、活用スタイルに適した学習環境を検討していく必要があるため、iPad、Android、Windows surfaceなどの機器を導入し、学生とともに実証の中で活用を進める。 活用スタイルの変容により、SNSに投稿される内容に質的な変化が生じることも想定されるため、SNS活用状況のデータ収集は継続的に行う。これら調査、データ収集に協力してもらう学生に謝金を支払う。 以上のような調査・研究の状況を適宜発表し、他の研究者とのディスカッションにより知見を深めていく。そのため、教育系、ICT活用系の学会において発表するための旅費を計上している。
|