研究課題/領域番号 |
24501225
|
研究機関 | 大阪学院大学 |
研究代表者 |
中嶌 康二 大阪学院大学, 教務課, 係長 (10565823)
|
研究分担者 |
中野 裕司 熊本大学, 学内共同利用施設等, 教授 (40198164)
白川 雄三 大阪学院大学, 経済学部, 教授 (80154368)
鈴木 克明 熊本大学, 社会文化科学研究科, 教授 (90206467)
|
キーワード | 継続意思(Volition) / 動機づけ / インストラクショナルデザイン |
研究概要 |
本研究は、「教育の質向上」に資するためのICT活用を、インストラクショナルデザイン(ID)を活用して教員を動機づけ、あらゆる高等教育機関において無理なく促進するためのフレームワークを開発・提案しようとするものである。平成25年度には、平成24年度に研究を進めた、ARCS-VモデルのV要因(=Volition要因)の下位分類提案をまとめて、原著論文として国際学会誌に投稿し、査読・掲載された(「研究発表」欄を参照)。このことがひとつの成果といえる。これにより、Volition要因の下位分類を(1)Implementation Intention、(2)Appropriate Self-control、(3)Self-monitoring、と定めて次の研究手順に進むことができることとなった。この後、この下位分類をもとにして開発を進めていた諸ツール、つまり「ARCS‐Vのヒント集」と「学習意欲のためのデザインステップ表」、2種類の「仮想シナリオ」についての検証作業を進めた。まず、複数のID専門家によるレビューを行い、IDの観点から諸ツールの妥当性と了解性を高めることを目指した。次に、複数の大学教員(IDの専門家ではない)の協力者を得て、諸ツールの1対1形成的評価を繰り返した。これらにより、諸ツールの品質について一定の向上を図ることができたと考えられる。これらの進捗については、複数の学会等で発表し、他の研究者の意見・批評を受け、これらを研究改善の材料とした。 他方同時に、ARCS+ATモデルとARCS-Vモデルをそれぞれ詳解し、その関連性を体系的にまとめる作業を行った。なお、この作業については、博士論文として公開に資するものとしている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度の実績報告に記載したとおり、平成24年度に開発を目指していた、教員のためのVolitionチェックリストは、ARCS-Vモデル研究として「ARCS-Vモデルヒント集(=ヒント集)」を開発することがこれに代わるものとなっており、平成25年度には、このヒント集の妥当性と了解性を高めることに注力した。また、この研究から端を発し、研究デザイン上必要という理由から開発するに至った「学習意欲のためのデザインステップ表(=デザインステップ表)」は、Volitionチェックリストとしての機能を充足するものである。このツールについても同様に妥当性と了解性の担保に注力した。これらの作業により、Volitionチェックリストに代わるツールの開発を進めたものの、ヒント集やデザインステップ表、仮想シナリオの諸ツール検証においては、各ツールの十分な妥当性・了解性を担保するには、成果が見られるまで検証作業を実施する必要があると思われたため、専門家のレビュー、1対1形成的評価の作業に、当初予定していた以上に時間を要した。 また、ARCS+ATモデル研究として、機関で利用できるARCS+ATチェックリストを改善することを目的として挙げているが、ARCS+ATチェックリスト改善のための試用実験を行う前段として位置付けられる、理論的検証作業として、ARCS+ATモデルとARCS-Vモデルの関連性を詳解してまとめる作業を行ったが、先述のVolition関連研究の作業との兼ね合いから、この作業も予定外に時間を要する結果となった。 これらの理由により、研究作業に若干の遅れが出ている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進においては、ARCS-Vモデルの実践有効性の検証作業の継続と、ARCS+ATチェックリストの改良と検証作業を通して、ARCS+ATモデルにもとづく大学等機関向けフレームワークを提案することを目指すものである。 まず、ARCS-Vモデルの実践有効性を検証する作業の続きとして、関連諸ツール、つまり「ARCS‐Vモデルヒント集」と「学習意欲のためのデザインステップ表」、2種類の「仮想シナリオ」を大学教員の小グループによる試用データにもとづきデータ分析を行う作業を行う。これは諸ツールの改善に資するものでもあり、研究成果は、そのままARCS-Vモデル研究に貢献することとなるとともに、ARCS+ATモデル研究においても活用できるツールの開発となる。 他方、ARCS+ATモデルの理論的検証の作業の続きとして、平成25年度にARCS+ATモデルとARCS-Vモデルの関連性の検証と取りまとめを行った、その成果に基づき、ARCS+ATチェックリスト改良版を整備する。これを活用して、複数の大学当局担当者の協力を得て改善を行い、ARCS+ATモデルならびにチェックリストの改良を行う。 最後に、本研究の取りまとめとして、ARCS+ATチェックリストの利用を軸とした大学等機関向けのフレームワークの提案を行う。同時に、ARCS+ATチェックリストの利用を取り巻く環境における諸課題を検証し、提示することを試みる。 なお、本研究の成果は、平成26年度ならびに平成27年度以降も含めて随時、国内外の学会等において広く発表し、同時に国内外の教育工学研究者と意見交換していく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に計画予定であった国外における研究発表が実現できなかったため、その分の予算を年度中に使用することがなかった。 平成26年度は、国外(米国を予定)における研究発表を行うことを計画する。このための諸経費を次年度使用額から工面するものとする。
|