研究課題/領域番号 |
24501227
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 四天王寺大学 |
研究代表者 |
坂本 暁美 四天王寺大学, 教育学部, 准教授 (60423224)
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研究分担者 |
田中 龍三 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (60397792)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 教師用デジタル教科書 / 音楽科 / 学力育成 / 協働的な学び / 可視化 |
研究概要 |
近年、教師用デジタル教科書の研究が国家の重点課題に位置づけられ、すでに一部の学校で実証研究が始まっている。音楽科の教師用デジタル教科書は平成23年に中学校版が出版されたが、演奏やワークシートなどの学習記録を保存したり音を編集できる機能がなく、デジタルとしての特性が十分に活かされていない。 音楽科教育では知識・技能の習得が主たる目的ではなく、音に含まれるものを自分なりに意味づけし、価値を見出す思考回路をつくることが目的である。音楽科の学力育成のための効果的なデジタル教科書が存在していないという問題意識から、本研究では、デジタル教科書を「学力を高めるツール」の1つと捉え、①指導原理の提示、②活用方法、③教材としての在り方を提案する。 音楽科では学びの対象が音であるため、音の可聴化や音に対する思考の可視化が必要不可欠である。音楽科の学力を育成するためには、音楽を形づくっている要素を知覚しそれらの働きの違いによって生じる曲想の変化を比較聴取したり、音楽について感じたことや考えたことを他者と相互批評し合ったり、音楽の演奏過程を聴き直して省察するなど、常に音楽と思考を関わらせて授業を展開する必要があるが、デジタル教科書を活用することにより、音楽と思考を一体化させた授業を日常的に実現できると考えている。 これまで、現存する中学校版教師用音楽科デジタル教科書の機能の特長、問題点と改善法を整理した。また、韓国視察を通してデジタル教科書現状と課題を調査した。25年度は、韓国のデジタル教科書と日本のものと比較分析する。そして、音楽科の学力育成に沿ったプロトタイプ案、指導案などを具体的な形で提案することを通して、学校現場でデジタル教科書を効果的に活用するため基本的な方法を提供する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年は、音楽科の学力と指導法およびデジタル機器の特性を整理し、24年度に出版された中学校版音楽科教師用デジタル教科書の機能の特長、問題点と改善法を整理した。また、国内外の音楽科デジタル教科書活用の成果と課題を文献より整理した。音楽科の学力育成の視点から分析した結果、現存する音楽科教師用デジタル教科書は、楽器の奏法や民族音楽などの動画資料が少なく、学習者の興味関心に応じて資料にリンクできる機能がない等、知識技能の習得に寄与する機能に課題があることがわかった。また、音楽の構成要素を変更したり声部の各パートを抽出できる編集機能がない等、比較聴取したり分析的学習を促進する機能にも課題があり、デジタルの利点が十分生かされたものではなかった。これらのことから、マルチメディア資料の充実、ランダムアクセスの充実、編集・加工や録音・録画等の機能入力系統機能の充実が必要だということを明らかにした。 以上の所見により、音楽科デジタル教科書の機能の整理と課題はほぼ明らかにできたと考えられ、平成24年度に予定していた研究計画は遂行されたと考える。 なお24年度末、当初計画よりも進展があったためICT活用の現状と課題を調査するため韓国を視察し、デジタル教科書を活用した授業を参観し、教員2名にインタビューを実施した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、研究計画の2年目を迎える。平成24年度は当初計画よりも進展があったため、24年度末に韓国に視察した。平成25年度前半は、視察から得られた知見を整理し、韓国の教師用デジタル教科書活用の現状と課題を、日本のデジタル教科書活用と比較分析を行う予定である。また、音楽科の学力育成のための効果的な方法を整理し、その方法を取り入れたデジタル教科書のプロトタイプ案を作成し、26年度に実施する実証研究の基盤を整える。 計画が順調に遂行でき、プロトタイプ案が作成できた場合、平成26年度に計画している実証実践の一部を前倒しして実施する予定である。また、実証実践の人数を増やし、より詳細な基礎データを取得できることを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、研究遂行のため、第一に実証実験を実施する研究協力校用のタブレットPCなどの情報端末機、電子黒板システムおよび周辺機器の新規購入に研究費を充てる予定である。また、研究の必要に応じて韓国視察を再度行う。その他、国内外の研究資料や専門知識の提供にかかる謝金、プロトタイプ案の制作のための謝金、授業録画撮影、撮影されたDVの読み取り作業のための研究補助費として謝金、翻訳・通訳・外国語論文校閲の謝金が必要である。後半に入り、研究費予算の状況を見合わせ必要に応じて設備備品費を検討する。
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