研究課題/領域番号 |
24501239
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイ |
研究代表者 |
阿辺川 武 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイ, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (00431776)
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研究分担者 |
室田 真男 東京工業大学, 社会理工学研究科, 教授 (30222342)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 日本語作文支援 / 誤用コーパス |
研究概要 |
今年度の研究実績を,本研究で明らかにすべき2つの課題に分けて報告する. 「作文支援で考慮すべき学習者属性」については,我々が作成した日本語学習者作文コーパス「なたね」を分析し,学習者が誤りやすい箇所を特定・類型化することを試みた.「なたね」に付与した誤用タグのうち「誤用の要因・背景」に着目し,学習者が犯しやすい誤りの傾向,学習者の母語や日本語能力といったメタ情報との関連について分析を行った.「誤用の要因・背景」に含まれる誤用タグのうち項目の多い「類似」「母語干渉」「レジスター」を観察した結果、1.「字形の類似」「音の類似」による誤りは,非漢字圏初級学習者の例に多く見られた.語の表記と音声理解は相互的なものであり,どの母語の学習者にも誤った理解はあるが,特に非漢字圏初級学習者は漢字表記にハンディキャップがあるため,仮名表記を使用することで音声理解の誤りが顕在化している.2.「意味の類似」による誤りの中で漢字圏学習者によるものは,母語における漢語の意味と日本語における意味の異同によって誤ることがあり,母語干渉の影響もある.3.「母語干渉」は,語の意味の類似によるものが多く見られ,構文的な影響もわずかにみられた.4.「レジスター」の誤用は,初級レベルではほとんどタグ付けがされず,上級者では,話し言葉によって学んだ日本語の知識で,アカデミックな文章を書く段階になって,レジスターの知識が不十分であるために,不適切な表現が散見される.文体の不統一についても文法的な知識の不足が影響している部分があることがわかった. 「提示項目の在り方」については,我々が開発・公開している作文支援システム「なつめ」の利用者評価の結果,入力した語と共起する語の一覧を提示するだけでなく,自分で共起する語を選択し,その語と関連する語だけを提示してほしいなどの要望をもらったため,その要望に合うような改善をおこなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画・方法で記した3つの研究のうち、(1)の学習者属性に関する研究については、誤用コーパスの分析を行ない学習者が誤りやすい箇所を特定・類型化し、結果をまとめたワークショップでその成果を発表したことで順調に進展している。 (2)の提示項目のあり方に関する研究についても、一部の利用者からの要望を集め分析し、支援に有効なものはシステムに反映させることを行ったため順調に進展している。 (3)の評価については、(2)の利用者による評価を行ったことは順調に進展しているが、日本語学習者による作文作成の評価実験は計画中で、次年度に実施予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は今年度と同様、「学習者属性に関する研究」「提示項目のあり方に関する研究」「評価」の3点について研究を推進していく。まず「評価」については研究協力者や海外研究協力者の協力を受けて、日本語学習者に作文支援システムを利用しての作文作成の実験を行い、得られた作文の分析をおこなう。「学習者属性に関する研究」については、学習者作文コーパスのさらなる分析をおこなうとともに、「評価」の実験で得られた作文をタグ付けし作文コーパスに追加する。「提示項目のあり方に関する研究」では実験のアンケートで得られた改善点や要望を検討し、システムに実装するとともに、よりよい提示項目のあり方を探る。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者:阿辺川:50万円 学習者作文コーパス作成、作文支援システム構築費用、旅費 研究分担者:室田:20万円 作文支援システム構築費用、旅費
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