最終年度である平成26年度は,学習者作文に含まれるレジスター誤り,特にアカデミック・ライティングにおける話し言葉の使用など不適切な表現を自動的に検出し,誤りを指摘する日本語作文推敲支援システムを平成25年度に引き続き開発をおこなった.そして平成25年度に行ったシステム利用実験の実験データを元に,システムが指摘した箇所に対して学習者がどのような変更を施して対処したかを調査・分析し,学習効果の様相を明らかにした. その結果,システムを利用した学習者の中には,システムによりレジスター誤りが指摘されても学習者が適切に対処できない事例が多くみられた.その主因として,指摘の精度が不十分でシステムの誤指摘も多く,本来,より優先して訂正すべき誤用が埋もれてしまったことが挙げられる.また,実験後に回収したシステムに対するアンケートでは「誤り指摘箇所に対してどのように訂正したらよいかがわからない」「訂正のヒントとなるような情報をもっと提示できないか」という意見が多く寄せられた. 今後はこの2つ課題に集約して解決手法を検討し,開発を進める予定である.一つ目の課題に対しては,これまで,作文課題としてアカデミック・ライティングを一括して捉え,話し言葉と書き言葉の区別を中心に誤用を検出してきたが,テーマの硬さ・柔らかさでレジスターが異なり,学習者が使用する表現にも違いが出るため,レジスターの細分類の必要性が明らかになった.そこで,品詞に応じて誤用検出の対象および,検出に使用するデータを使い分けることで,レジスター誤り検出の精度向上を図る. 二つ目の課題では,共起表現検索や用例表示をより学習者向けに改善することを検討している.具体的には,一部の品詞に限定されている共起表現検索をより多くの品詞に対応すること,単に用例を提示するのではなく学習者が執筆している作文内容と近い用例を提示できるようにすることである。
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