研究実績の概要 |
明治初期日本おける医療情報の伝達・普及・啓蒙に関して「形成過程にある医療専門職集団」、「民衆」、さらには、この間を媒介した「医療啓蒙者」のそれぞれの活動に焦点をあてて、次の3つの側面から研究を進めた。 第一に、西洋医学の中核とも言える西洋解剖学的人体像の「民衆」への伝達・普及に関して、学制期に初等教育用の教科書として刊行された「人体問答」書に焦点をあてて分析した。成果を日本医史学雑誌に原著論文として掲載した他、イギリス・マンチェスターで開催されたXXIII International Congress of History of Science, Technology and Medicine (21.July~27.July 2013, Manchester, England)で口頭発表した。 第二に、江戸期までの東アジア文明圏の医療技術と異なる枠組みの中で19世紀半ばに欧米で開発された新しい医療技術である皮下注射法に焦点をあてて、「形成過程にある医療専門職集団」への伝達・普及の過程を分析した。成果を日本医史学雑誌に原著論文として発表し、平成25年度日本医史学会学術奨励賞を受賞した。さらに、佐倉市教育委員会主催の佐倉順天堂記念講演会で「注射器・コレラ・西南戦争」として発表した。 第三は、江戸期に既に日本に存在し機能していた出産に関する2つの医療職、すなわち、産婆と産科医に焦点をあてて医療情報の導入と伝達の経過を分析した。成果を教育史学会で発表した他、日本医史学会例会でシンポジウム:産科と助産として公開発表した。 これらの研究の結果、明治初期日本における医療情報の伝達・普及・啓蒙の過程、さらには、佐藤進、佐々木東洋、上田維暁、小林義直ら「医療啓蒙者」たちの活動が明らかにされた。
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