研究課題/領域番号 |
24501251
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
中根 美知代 日本大学, 理工学部, 研究員 (30212088)
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研究分担者 |
植松 英穂 日本大学, 理工学部, 教授 (70184968)
溝口 元 立正大学, 社会福祉学部, 教授 (80174051)
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キーワード | 個別科学史 / 物理学史 / 数学史 / 個別科学史の学位 / 国際情報交換 / 科学史専門大学院 |
研究概要 |
個別科学史の講義の設置状況を把握するため、旧帝大や主要な国公私立大学の『年史』や『大学一覧』を確認し、関係者へのインタビューを行った。研究組織構成員のなかで分担して東北・東京・名古屋・大阪・京都・神戸・茨城・筑波・東京工業・お茶の水女子・立教・東京理科・東海・日本(理工学部)等の大学の『学生便覧』やシラバスを確認した。また、個別科学史の講義を担当した人物の著作にあたり、講義がなされていた大学を特定するとともに、実施した講義内容について考察を深めていった。その結果、上記の大学のほとんどが、個別科学史を置いた時期があることがわかった。ただし、たまたま担当者が手配できたときに限っている大学と、一定の位置づけを与えている大学(立教・東京理科・日本(理工学部)など)があった。戦後から現在まで、このような科目を設置する大学の総数に大きな変動はない。 また、個別科学史での学位の状況を確認し、担当者の学問的系列も部分的に明らかにした。科学史を専門とする大学院で学位が出せるようになる以前は、物理学史の学位は全員理学博士、数学史は文学博士である。物理学史においては、物理学者と物理学史の関係を、数学史においては文学系研究者と数学者のやりとりを、前者は名古屋大学、後者は大阪大学において調査し、その状況を具体的に示した。 これらを押さえて、個別科学史に関連する事柄の一覧を作ったところ、東京大学理学系研究科に科学史・科学基礎論専攻ができた1970年と、この専攻が総合文化研究科広域科学専攻の1コースとなった1995年を一つの指標とすると、全体像が見えてくることが確認できた。 さらに、コペンハーゲンでの研究集会参加・トロント大学訪問により、海外での個別科学史の教科書や担当者の状況を調べ意見交換し、欧米で適当とされる教科書の邦訳が多数あることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
個別科学史の設置状況の調査は、ほぼ予定した通り終わり、結果もまとまった。科学史学会等で関係者との討論も行い、調査の意義も見出されている。一方で、調査の過程で、申請時には予想していなかった事実が見いだされた。数学史における文系研究者との連携がまとまった形で存在し、物理学と物理学史との関連が、想定したものと大きく異なっていたことである。これらは考察を進める価値があると判断し、調査を実施した。そのため、カリキュラム編成にかかわる検討が、当初予定したものより遅れている。特に、「通常科目の枠では教えられないが、理系に学ぶ者として知っておきたい事柄」を具体化する部分が、予定した通りになされていない。 予想外の結果がでてきたが、それは、計画以上の研究の進展によるものであること、しかし、そのため予定したとおりのことができない部分もあったということで、全体として「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
「制度化以前の個別科学史」の調査結果をまとめた論文の準備をするのは当初の計画の通りである。ただし、申請時にはまったく予期していなかった論点でまとめるので、さらなる調査や科研グループ内外での個別の研究打ち合わせなど、労力と時間を予定していた以上に費やすことを考えている。 研究組織構成員の複数名が、今年度も個別科学史の講義を担当する。その講義を準備する中で、昨年度までに挙がった個別科学史にかかわる教育目標や内容などを参照・検討し、それを研究グループ内の共通の理解となるような形でミーティングを設定する。 昨年持ち越した「通常科目の枠では教えられないが、理系に学ぶ者として知っておきたい事柄」の具体化についても、構成員各自の個別科学史の講義の検討と併せて行なうことが望ましいと考えている。特に、平成25年度末に出てきたstap 細胞をめぐる問題は、理系学科で学ばれるべきことを挙げていくために、重要な材料を提示すると考えられる。 なお、現時点での研究の進捗状況にあって、海外からの情報を受け取ることは有用と判断し、中根と研究分担者の溝口による欧米研究機関訪問は実施する方向ですすめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
中根が予定していたトロント大学訪問にあたり、共同研究として招へいされることになり、当初予定していた経費が減額となったためである。また、3月に中根が実施した関西方面の出張の精算が翌年度に持ち越されている。 研究の進捗の状況から、物理学史・数学史での状況の新たな発見に基づき、さらなる調査や意見交換をする必要が出てきたので、研究組織構成員の国内旅費数回と、インタビュー謝金、論文作成にかかわる諸経費として計上する予定である。
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