研究課題/領域番号 |
24501252
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪産業大学 |
研究代表者 |
田村 誠 大阪産業大学, 教養部, 教授 (40309175)
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研究分担者 |
大川 俊隆 大阪産業大学, 教養部, 教授 (00185208)
張替 俊夫 大阪産業大学, 教養部, 教授 (50309176)
角谷 常子 奈良大学, 文学部, 教授 (00280032)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際情報交換 / 国際研究者交流 / 中国:フランス:アメリカ:イギリス / 中国古算書 / 『九章算術』 / 岳麓書院蔵秦簡『数』 / 張家山漢簡『算数書』 / 数学史 |
研究概要 |
岳麓書院蔵秦簡『数』については、その写真版が平成24年1月に出版された。我々は出版後直ちに入手し、写真版を基にした訳注の作成を開始した。3月までは、これを『九章算術』の訳注作業と並行して行っていたが、本研究期間が開始された4月以降は、研究計画で「『数』の写真版入手後直ちに『数』の研究体制に切り替える」としていた通り、『九章算術』については一時中断している。 当初、研究会は月例の予定であったが、研究を円滑に進展させるため、月2回に増やして検討を進めている。『数』の訳注は、平成24年度では2編の論文として発表し、1編が印刷待ちである。今後、印刷待ちのものを含め、3編の論文として発表した後、書籍にまとめ出版する予定である。 我々の研究は、それまでの整理者・研究者が見過ごしてきたいくつもの疑問について、あるいは解決しあるいは有力な案を提示してきている。訳注の中で新たに得られた知見について、8月には田村が京都大学数理解析研究所の国際学会で講演発表を行った。ここで発表した結果については、後に中国人研究者による発見があったようで、同氏から我々に既に発表した内容の確認があった。また、10月には大川が現地調査に赴き、『数』の記述と里耶秦簡の刻歯との関係を明らかにした。こうした我々の成果については、2編の論文として印刷待ち、1編の論文として投稿中である。 『数』の訳注論文2編と印刷待ち論文1編については、中国語に翻訳したものを「簡帛網」(武漢大学にあるプレプリントアーカイブ)に投稿し、現地研究者の批評も受け入れられる態勢を整えている。なお、印刷待ち論文のもう1編は現地研究者との共著であり、投稿中論文は中文要約を付した英文である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように、平成24年度は『数』の研究に専念した。その結果、平成25年6月には『数』全文の検討を終える見込みである。『九章算術』については中断中ではあるが、研究計画では「『数』の写真版入手後直ちに『数』の研究体制に切り替える」としており、その『数』訳注作業の見込みが1年から1年半であったことを考えれば、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
『数』については、平成25年6月に検討を終え、さらに2編の論文としてまとめる。秋以降、訳注を取りまとめ書籍化の準備を行う。また、これまでの検討を踏まえ、7月下旬に田村が英国での国際医科学技術史学会で講演発表を行う予定である。 9月には、『数』と同時代の古書である北京大学蔵秦簡について、現地調査を行う。北京大学蔵秦簡には、張家山漢簡や岳麓書院蔵秦簡よりかなり多い率で算術簡が含まれていると言われている。『算数書』が『数』の解読に役立ったように、北京大学蔵秦簡も多くの示唆を『数』と相互に与えあうことが予想され、したがって算術簡の多い北京大学蔵秦簡の重要性は高いと予想される。 『九章算術』については、6月ないしは7月以降、訳注を再開させる。研究会を元の月例よりは多くして、研究の迅速化を計る。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、大きく次の研究経費が見込まれている。 7月、英国へ学会出張旅費、田村、35~40万円 9月、中国へ調査出張旅費、大川、田村、各15~20万円 このため、平成25年度は研究計画申請時予定の60万円では、前年度残額の30万円弱を加えても資料購入などに不安が残るところとなった。そこで、平成25年度は30万円の繰り上げ請求を行い、資料購入費や近隣への出張旅費を確保した。 ただし、平成25年度後半は、『数』訳注の書籍に付ける写真図版の版権交渉なども始める予定であり、こちらの費用は見込みが立っていない。
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