研究実績の概要 |
岳麓書院蔵秦簡『数』について、研究成果報告書として『岳麓書院蔵秦簡『数』訳注』を平成28年11月20日付で出版した。すでに発表した論文8編に算題の中文訳と中文算法要点を加え、釈文との対応が明示された写真図版、連携研究者であった故田村三郎氏による古算書用語索引を付けたもの。本年度研究費の全額を出版費用に充て、その約63%を賄った。なお、写真図版の版権費用についても既に、本科研費によって購入している。本書出版後の平成28年12月に岳麓書院の陳松長氏らと研究会を行い、とくに算題の配列について議論した。 『数』についてはまた、次の3つの学会で田村が講演発表した。 “On the "Shu" housed at Yuelu Academy,”International Symposium on the History of Mathematics in East Asia (II-6), 2016年11月12日, Keihanna Plaza 「岳麓書院蔵秦簡『数』中の不定方程式について」 日本数学会秋季総合分科会、2016年9月17日、関西大学 「岳麓書院蔵秦簡『数』算題の配列について」日本数学会2017年度年会、2017年3月24日、首都大学東京 『九章算術』について、定例の研究会での検討を続け、第8巻方程章の読解がほぼ終了した。方程章は連立1次方程式の解法を扱っており、その術は前進消去・後退代入によって解くとするものである。数学的には比較的システマティックな部分であり、計算経過を術に忠実に再現することができた。一方で第6巻以降宋版が失われ適当な版本が見当たらない中、本文・劉徽注・李淳風注が入り乱れ、テキストの校訂や忠実な訳の作成に多大な時間を要した。成果としては、論文「『九章算術』訳注稿(23)」以下(25)まで3本を発表し、さらに(26)、(27)の2本が印刷予定である。
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