研究課題/領域番号 |
24501259
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 別府大学 |
研究代表者 |
渡辺 智恵美 別府大学, 文学部, 教授 (40175104)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 空気汚染物質 / 展示・収蔵施設 / 除去剤 |
研究概要 |
博物館等展示・収蔵施設(以下、施設とする)における有機酸やアンモニア等の空気汚染物質の実態調査を実施するとともに、除去剤を開発することを目的とする。本研究は、施設内(とくに中・小規模施設)で局所的に設置することができ、取扱いが簡便で安全な空気汚染物質除去剤の開発を目標としている。 今年度は、施設における空気汚染状況の実態調査を進めるとともに、排出される微量な有機酸やアンモニアの定量方法の検討、除去剤の試作と使用する材料の検討を行った。 空気汚染の実態調査では、四国・九州の新設(間もない施設を含む)から建築後数十年を経過した施設を抽出して時間経過と空気汚染物質の排出量について比較した。あわせて、収蔵資料に最も影響を与える展示ケースや展示台についても同様の調査を行うとともに、除去剤を設置して性能を評価した。調査の結果、新設館よりも建造後数十年を経た施設の方が測定値が高い場合も多かった。これは、施設の空気汚染についての認識が高まってきたことや建造物の材質(コンクリート造りか木造か等)が関係している可能性が考えられる。しかし、展示ケースでは、おしなべて測定値が高く、測定不能な例も認められた。担当者からの聞き取り調査で、展示ケースや展示台は博物館建設や展示の際に最終段階で発注される場合が多く、充分な「枯らし」時間を取ることができない実態やインジケーターを設置していても汚染量が掴めないことが明らかになってきた。また、木製展示ケースでは、製造後10年以上経過しても有機酸やアンモニアの値が落ちていないことが判明した。これらの展示ケースには除去剤を設置し、経過を観察している。 微量の有機酸やアンモニアの定量方法は、実験の結果、イオンクロマト法が最も適していることが判明し、今後この方法を用いて測定を続ける。また、除去剤については一定の効果は認められるが、さらに改良を加えていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
試作した除去剤の性能評価が充分に行えていないため、改良が思うように進まなかったことや設置適正量に係る調査が行えなかったことがあげられる。また、狭小な展示ケースの測定方法を改良する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、除去剤の性能評価と改良を行う。あわせて、聞き取り調査で明らかになった問題を解決するために展示ケースや展示台の「枯らし」時間を短縮できる方法を考える。 これまで調査を行ってきた施設や展示ケースに除去剤を設置して空気汚染物質の挙動を調査し、長期的な除去能力や安定性を検証していく。除去性能の長期的な持続は、汚染物質の濃度や周辺環境に左右されると考えられるため、それらについても詳細なデータを集め、比較・検討を行いながら進める。 ※実験(一部臨床実験を含む)および除去剤の試作、開発は、研究協力者の西田典由(愛媛県産業技術研究所紙産業技術センター所属)と共同で行う
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度に終了できなかった除去剤の改良実験を行うために、実際に使用される材料を用いた展示台を試作し、密閉容器(デシケータ等)内に設置して有機酸やアンモニア等の発生状況や挙動をモニタリングする。
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