研究課題/領域番号 |
24501262
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研究機関 | 公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、 |
研究代表者 |
伊藤 幸司 公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、, その他部局等, 室長 (50344354)
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キーワード | 保存処理 / トレハロース / 含浸 / 木材 |
研究概要 |
25年度も引き続きトレハロースの結晶化および促進方法について研究を進めた。主に樹種や腐朽度など木製資料の条件ごとに、必要となるトレハロース結晶(固形分)を明らかにするための研究を行なった。含浸処理後の重量測定を継続して行ない、資料毎の減少傾向を確認することで、それぞれの適切な処理条件の策定に活用できる。 このような基礎的な研究を進める中で、木製資料だけでなく、これまで保存処理が難しいとされてきた縄や布といった脆弱な資料に対する有効性も見出し、従来よりも安全で短期間の処理が可能であることが明らかになった。 これらの研究成果については、日本文化財科学会第30回大会(於:弘前大学)で発表し、論文としてまとめたものを「考古学と自然科学vol.65」に投稿し、公表した。さらに25年度は、東アジアを中心とした世界各国の研究者に対しても研究成果を広く発信するため、国際博物館会議水浸考古遺物保存会議(WOAM 於:トルコイスタンブール)、第3回東アジア文化遺産保存国際会議(於:韓国慶州)、第1回出土木漆器保存国際学術研究会(於:中国荊州)にて研究発表を行なった。また、昨年度も開催した実習を含む研修会については、宮崎県埋蔵文化財センターにて行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度に予定していたトレハロースの結晶化および促進方法の調査・研究については、実験や基礎的な調査もおおむね順調に進んでいる。特に目指している非加熱(常温)下での含浸処理の完了に向けた基礎的な調査を進めることができた。 また、当初計画していなかった国際会議での研究発表を行なったことの意義は大きい。これまでの調査・研究結果から、トレハロースは世界的に見ても安定した供給が可能であり、高温多湿といった環境下においても安定している物性を持つことから、日本だけでなく世界各国で適用可能な保存処理方法であるとの認識を持った。そこで、25年度に開催された3件の国際会議で研究内容を発表し、多くの反響を得たことは非常に大きな成果だと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当該研究の大目標は、出土木製文化財という実資料を1点でも多く後世に伝えるべく、トレハロースを用いた保存処理方法を確立し、実用化することにある。現在までに、トレハロースの持つ優れた物性が明らかになり、サンプル資料等では安定した処理結果が得られている。最終年度は、大阪市域で出土した実資料を用いて、樹種・普及度・大きさなどそれぞれ状態の異なる資料に対して保存処理を進め、適切な処理条件(含浸期間・最終濃度等)を確立し、実証する。同時に、実資料における非加熱(常温)下での含浸処理適応範囲を検討していく。 これらの研究は日々進展しており、研究者に対しては早急に情報を公開していく必要がある。26年度は7月に日本文化財科学会(於:奈良教育大学)で研究発表を予定している。さらに、国内研究者向けの研究会・研修会も継続して行なっていく予定であり、4月は大阪文化財研究所で、5月には鹿児島県埋蔵文化財センターで開催予定である。最終的には、3年間の研究成果を報告書としてまとめ、多くの研究者に配布する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた実験補助や、トレハロースを購入するための物品費を使用しなかったため、当該助成金が発生した。 次年度では、実際の保存処理を実施していくため、そのための補助や材料費として使用する予定である。
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