研究課題/領域番号 |
24501267
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
湯浅 万紀子 北海道大学, 総合博物館, 准教授 (60182664)
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研究分担者 |
清水 寛之 神戸学院大学, 人文学部, 教授 (30202112)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 記憶 / 来館者研究 / 博物館評価 / 博物館学 / 認知心理学 / 質問紙調査 / 面接調査 |
研究概要 |
本研究の目的は、博物館活動に関与する様々な人々の博物館体験の長期記憶を調査することによって、費用対効果や経営効率とは別の観点から博物館の存在意義を明らかにし、博物館評価の新たな指針を示すことにある。 3ヶ年に設定された研究期間の初年度である平成24年度では、地域での博物館活動を50年以上続けている名古屋市科学館と明石市立天文科学館において、来館経験者だけでなく友の会会員、ボランティアを対象にして、記憶に残る博物館体験の諸相を問う質問紙調査を実施した。記憶に残る博物館体験の諸相を量的に分析できる日本版の記憶特性質問紙(MCQ)を本研究用に改訂し、その内容について自由記述で問う設問を加えた質問紙調査を実施した。 名古屋市科学館では、来館者251名、友の会会員212名、天文指導者クラブ会員30名、ボランティア62名からの回答を得た。明石市立天文科学館では、来館者142名、友の会・ボランティア31名、シルバー天文大学参加者28名からの回答を得た。すべての回答データのコンピュータへの入力作業を完了した。現在、データの整理・分析を行っている段階である。 面接調査の協力者の選定を含めた調査方針について両館との検討を進め、面接調査と、職員と関係者への質問紙調査・聞き取り調査(ヒアリング)は次年度に行うこととした。 また、北海道大学総合博物館で「博物館体験の長期記憶研究に関する研究会」を開催し、研究代表者(湯浅万紀子)と研究分担者(清水寛之)、研究協力者(井上毅)が発表し、本テーマに関心のある研究者と大学院生、学部生(約20名)と意見交換した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
名古屋市科学館と明石市立天文科学館の研究協力者をはじめ職員の方々からの協力を得て、当初の予定より多くの質問紙調査の機会に対応でき、想定以上の数の回答データを収集することができた。質問紙調査の自由記述の回答には、数十年前から数年前の来館経験を持つ来館者や、友の会やボランティアとして活動してきた人々の多様な記憶が綴られ、面接調査でその詳細を聞き取って分析し、地域でのそれぞれの館の役割を明らかにする確かな糸口をつかむことができた。 質問紙調査の回答者から選定する面接調査候補者については、想定以上に面接調査を希望する回答者が多く、選定には十分な検討が必要である。研究分担者と研究協力者だけでなく、両館の運営担当職員と相談しながら慎重に進める必要があり、次年度に実施することとした。 質問紙調査の分析を進めながら、その結果を考慮した上で、職員と関係者への質問紙調査・聞き取り調査(ヒアリング)も次年度にすることとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に実施した質問紙調査回答者のなかから、博物館体験の多様な側面について回答した人や、特異な体験を持つ人を選定し、面接調査を実施する。 また、名古屋市科学館と明石市立天文科学館の現在の職員に、平成24年度に来館者向けに実施した質問紙を職員向けに改訂した質問紙調査を実施する。本研究に特に関連した回答をした職員に面接調査を実施する。また、両館の運営に関わってきた関係者(すでに退職した元職員や館長経験者などを含む)に聞き取り調査(ヒアリング)を行い、その方の思い出を語っていただく他に、地域での科学館の役割について意見を伺う。 これらの調査結果は量的・質的に分析し、本研究代表者と研究分担者のこれまでの調査研究結果と比較しながら、両館の職員である研究協力者とともに記憶の内容と特徴、記憶として定着する諸要素を縦断的に検討する。 学会などで発表を行い、論文を投稿する準備を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費について、質問紙調査の機会が予定以上に拡大したために旅費が増えたが、面接調査を次年度にまわしたために書き起こしと評定作業の謝金は支払わず、わずかに残金が生じた。次年度はこの残金と次年度分の研究費を合せて、両館で上記調査を実施するための研究代表者と研究分担者の旅費に使用する他、録音・録画した調査の書き起こしと評定作業の謝金などに使用する。
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