東京大学創設期(1877-1900)は日本における植物分類学研究の草創期にあたる。本草学者の伊藤圭介、東京大学教授の矢田部良吉、松村任三、松村を補佐した大久保三郎などが中心となり、分類学研究のため押し葉標本を収集・作製した。これらの標本をもとに多くの新種が日本人の手で記載され、その記載のもとになったタイプ標本やその重複品が多く含まれている。これらの標本ラベルには学名と簡単な地名が記されているのみで、採集者や採集年月日など標本として必須な情報が記されていないものも多い。しかし、標本の採集・調査の記録は研究雑誌、報告書、日記などに記されている場合も多く、標本とラベルの特徴、文献・資料に基づき、調査の時期や地域を明らかにすることが可能である。日本植物分類学研究の草創期に分類学研究に用いられた標本を明らかにするため、標本情報として必要なデータの基礎を明らかにし、標本ラベルに記されていない情報を補完して、標本データベースを構築することを目的とする。 東京大学植物標本室の標本から、明治時代に収集された標本を台紙、ラベルなどをもとに識別し、1)矢田部良吉、松村任三、大久保三郎らの採集品 2)伊藤圭介が関与したとみられる標本 3)同定依頼のために外国に送った標本の重複品 などを分けた。また、植物研究雑誌などを調査し、この時期に行われた採集旅行の記録と採集された植物目録について探索を行った。
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