研究課題/領域番号 |
24501274
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
緒方 泉 九州産業大学, 美術館, 教授 (10572141)
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キーワード | 大学博物館 / 大学間連携 / 学芸員研修 / 博物館実習 / 国際情報交換 / 韓国 / アメリカ / イギリス |
研究概要 |
本研究は、日本で初めて行うユニバーシティ・ミュージアムに対する経年調査である。科研費による3年間の調査は①資料収集、予備的考察②アンケート調査③現地悉皆調査④調査内容分析⑤考察・発表という5段階で展開する。 平成24年度~25年度前半までに東日本地域、西日本地域の大学博物館からアンケートを回収、調査内容分析(統計処理、グラフ化)が進んだため、平成16年度、17年度に実施したアンケートとの比較研究を後半から開始した。また比較研究とともに、平成8年の学術審議会学術情報資料分科会学術資料部会「ユニバーシティ・ミュージアムの設置について(報告)」で定義された「①大学院・学部生の教育に参加するとともに、②博物館実習をはじめ大学における学芸員養成教育への協力をおこなう。また③一般の博物館の学芸員に対する大学院レベルのリカレント教育や、④人々の生涯にわたる学習活動にも積極的に協力することが望ましい」という4つの機能から各々の特性を分析した。 ところで、昨年度悉皆調査が思うように捗らなかったが、今年度は文化庁「大学を活用した文化芸術推進事業」の採択を受けて実施した「京都・九州大学博物館連携展」、「学芸員技術研修会」、また全国大学博物館学講座協議会西日本部会大会で多くの大学博物館関係者を本学に招くことできたため、悉皆調査が進展した。 新学芸員養成課程の博物館実習(学内実習、館園実習)を進めていくためには大学博物館と地域博物館の連携協力が必要となる。最終年度はそれに対応した研修会等を計画したい。 大学美術館の活動については、いくつかの発表機会を持った。中でも「第1回韓・日博物館協力と博物館経営マーケティング国際フォーラム(平成25年12月14日、於:韓国・済州島)」で「博物館学の深化と多様性」という発表を行い、韓国の研究者と交流を深める機会となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度課題となった下記の件については概ねその課題が解消され進捗が見られた。 当初予定していた大学博物館へのアンケート調査は平成25年度前半で終了し、調査内容分析もアルバイトを増員し順調に進んだため、後半からは平成16年度、17年度調査との比較調査に着手している。 また、文化庁事業の採択による「京都・九州大学博物館連携展」「学芸員技術研修会」や全国大学博物館学講座協議会西日本部会大会の開催を通じて、多くの大学博物館、地域博物館関係者と交流し、悉皆調査が進捗した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、比較研究を基に新学芸員養成課程に対応したユニバーシティ・ミュージアムについて、「ユニバーシティ・ミュージアムの設置について(報告)」で定義された「①大学院・学部生の教育に参加するとともに、②博物館実習をはじめ大学における学芸員養成教育への協力をおこなう。また③一般の博物館の学芸員に対する大学院レベルのリカレント教育や、④人々の生涯にわたる学習活動にも積極的に協力することが望ましい」という4つの機能から再度検証を進めるとともに、博物館実習に関するプログラム開発も行いたい。 特に博物館実習(学内実習、館園実習)を進めていくためには大学博物館と地域博物館の連携協力が必要となる。昨年度文化庁事業で実施した地域学芸員へのアンケートでは「地域で開催される研修機会が少ないこと、そのため学芸員養成を行う地域の大学に研修機会を提供してほしい」、また「博物館実習を実施するに当たっての大学と・地域博物館共通の技術指導マニュアルが必要である」という意見が多かった。 当初計画では、最終年度にアンケート調査や悉皆調査で判明した特徴的なユニバーシティ・ミュージアム関係者を招聘したシンポジウムの開催や「ユニバーシティ・ミュージアム総覧Vol.2」の印刷を予定していた。しかし、これまでの調査から、新学芸員養成課程にユニバーシティ・ミュージアムが対応する方策の一つとして、地域博物館学芸員のリカレント教育プログラム開発が喫緊な課題であると判断されたため、データベースを印刷物で公開するのではなく、ネットで公開して経費を節減策を取るなどして、当初計画を一部変更し大学博物館関係者や地域博物館学芸員を対象とした国際的な視野に立った研修会等を開催したい。 また、これまでの研究成果については5月の日本ミュージアム・マネージメント学会や6月の全日本博物館学会等での発表、また日本博物館協会機関誌への投稿を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は平成16年度、17年度調査との比較研究を進展させるため、アルバイトを増員し、昨年度やや停滞したアンケート調査の回収、整理さらにデータ分析に注力した。従って当初計画より謝金の支出が増加している。 また、旅費については文化庁事業で実施した「京都・九州大学連携展」で京都の15大学博物館そして九州の③大学博物館が本学で一堂に会す機会を持ち、交流を深めることができたことで、各地へ訪問する用務がなくなったため、経費の軽減につながった。その他の経費で郵送代を計上していたが、昨年度の反省からアンケート調査をメールで行ったことで経費を軽減することができた。 次年度については今後の研究の推進方策で述べたように、新学芸員養成課程充実のために、ユニバーシティ・ミュージアムが果たすべき役割として地域博物館学芸員のリカレント教育プログラム開発が必要であると判断した。また国際的な視野に立つ地域学芸員のスキルアップは館園実習の充実のために必要不可欠の課題である。 そのため、国際的な視野に立つ大学博物館関係者や地域博物館学芸員の育成を目指した技術研修会等を計画し、プログラム開発研究を進め、ユニバーシティ・ミュージアムの4つの機能について検証を深めたい。
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