研究課題/領域番号 |
24501280
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 滋賀県立琵琶湖博物館 |
研究代表者 |
中野 正俊 滋賀県立琵琶湖博物館, その他部局等, 特別研究員 (40443460)
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研究分担者 |
神山 保 滋賀大学, 教育学部, 教授 (50195690)
糸乗 前 滋賀大学, 教育学部, 教授 (90324558)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 博物館・学校連携 / 博物館・地域連携 / 防災・エネルギー教育 / 学習指導要領 / 学習支援プログラム作成 |
研究概要 |
1,平成24年度における具体的内容 学校における防災・エネルギー教育を推進するため、地域に存する各種事業者等専門家とともに具体的な学習支援プログラムを作成した。特に、学校教員や地域住民と協議しながら,次の4つの観点でアウトリーチモデルを整理した。第一に、研究対象地域にある自然史系博物館等相当施設の人的な資源を活用した。第二に、プログラム難易改善の可否を検討し,対象児童の発達段階に沿って支援モデルを作成した。第三に、学校教員などへの指導者研修に適用できるものを整理した。第四に、研究成果の従属変数(研究評価)を得るため、児童対象の質問項目に指導者対象の指導分析項目を追加した。 その結果、以下2つの成果が得られた。第一に、博物館相当施設や地域住民の知的資源を活用して、対象児童の発達段階に沿ったモデルを作成することができた。特に、学習指導要領(文科省)に立脚した結果、大人の視点ではなく、子どもの視点で具体的な学習支援プログラムを作ることができた(例:小学校第4学年「もののあたたまりかた」学習における火力発電実験、小学校第5学年「流れる水のはたらき」学習における水力発電実験など)。第二に、学習指導要領に沿うことによって、学校教員などの指導者研修に、授業構築への裏付けができた。また、総合的な学習の時間が減ったことにより、本研究が、理科を中心とした教科学習を対象とすることに意義が見いだされた。ただ、我が国の小中学校ではPISAやTIMMSなどの国際比較から,基礎学力の向上に重きを置く傾向がある。本研究で進める学習支援が、こうした尺度の中で、どの程度貢献できるかを見極める必要が出てきた。 2,平成24年度における研究の意義と重要性 (1)防災・エネルギー教育に絞るとともに学習指導要領に沿った実践研究を展開した点 (2)博物館考案学習の適用ではなく,学校や地域とともに開発する協働実践研究にある点
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究協力者である学校教員,地域住民と協議し,防災にかかる施設や博物館相当施設などに関わる専門家の支援を得て,防災・エネルギー教育に関する学習支援プログラムを作成した。以下3つのうち、先の2つは独立変数(具体的方途)に関する達成度項目を示し、残りの1つは従属変数(研究評価)に関する項目を示す。 1つ目に、プログラム難易改善の可否を検討して、対象とする小学生の発達段階に準じたものを作成することができた。このことにより、学習指導要領の趣旨に沿うことになった。これは、本研究3年次(最終年次)で進めるモデル汎用化へ向け、大きく寄与するものとなる。2つ目に、学校教員など指導者研修に適用できるものを整理できた。特に、学習指導要領の改訂によって、「総合的な学習の時間」の授業時数が減ったことにより、各教科の学習を中心として、作成された学習支援プログラムを作成し、実施する必要が出てきている。理科や社会科で目指されるねらいを実現する方向で、汎用化がより進んでいくようなプログラムを作成できた。3つ目に、児童生徒対象の質問項目に加え、学校教員や地域住民など指導者対象の指導分析項目を作成することができた。なお、児童生徒への測定は,中野ら(2007)の特性的環境配慮行動認知尺度を使用した。また,PISA2009,TIMSS2007を参考に,理科学習への興味関心を問う新たな質問項目を追加することができた。 文部科学省が主催する平成24年度の全国学力・学習状況調査には、理科が加えられた。その分析結果から、児童の理科学習における次の課題が明らかとなった。第一に、観察や実験の結果解釈の力に乏しいこと、第二に、既習事項と関係付けて考える力が十分ではないこと、第三に、文に考えをまとめて表現する力に乏しいことである。本研究では、博物館や学校が地域住民と連携して、こうした課題を解決する一方途を提供できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に構築したモデルを学校や地域住民と協議し実践展開することが中心となる。博物館の人的機能としてアウトリーチ事業はもちろんのこと、知的資源の提供を行う。具体的には、学校教員へ向けた指導者研修を実施したり、小中学校で学習支援プログラムの改良を進めたりする。また、物的資源として標本や展示物の貸出しを行いながら、作成したモデルを改善する。このとき、学校へのはたらきかけに関しては、前年度同様、あくまで学習指導要領に準じながら改良を進めていく。 本研究課題では最終的にモデルの汎用化を目的としている。つまり、学習指導要領に沿いながら、理科や社会科などの教科学習の中で、学習支援プログラムを展開していく。このことは,従来の博物館・学校連携に散見された一過性のモデルを作らないことを意味している。学習指導要領に沿うことこそ、全国の博物館が当該地域とともに学校へ教育的な関わりを展開する前提と考えるからである。平成26年1月からの汎用期では、電子媒体を使いながら,モデルの利用に関する追跡調査を行う。そのための足がかりとなるような具体的実践を進めていく。 平成24年度は、エネルギー教育に関する学習支援プログラムの作成が中心となったことにより、平成25年度は、防災に関わる具体的実践についての学習プログラムを作成し、改良を加えていくこととなる。ただ、こうした実践的研究は独りよがりとなってはいけない。博物館・学校・地域(防災・エネルギー施設を含む)連携に関する研究例は決して多くはないが、博物館と学校連携、博物館と地域連携、あるいは学校における各教科指導研究は多い。今後は、そうした先進的な事例を複数に渡って視察し、ひとつ一つの良さをつなげることによって、本研究をより充実させていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
地域住民や児童生徒に対する質問紙調査,指導者に対する指導分析と聞き取りを行い、モデルの改良へとつなげる。なお、測定値の処理は、次に挙げる3つの分散分析を行う。第一に、学習前後の測定値は被験者内要因とし、学習前・学習後で2水準となる。第二に、性は被験者間要因とし2水準となる。第三に、学習前後×性の2要因計画で分析する。そのために、紙類、印刷に要するインク、データ保存のためのメディアなどの事務品、統計分析にかかる情報機器や印刷機器が必要となる。 次に、前年度から改良したモデルをパッケージ化し,その汎用化へ向け,まとまった様式へ整理していく。つまり、ここではモデルに活用する学習支援プログラムを新たに作成し、あるいは改良していくことを計画している。したがって、太陽熱や水力などをエネルギーとして変換する児童生徒向けの実験機器基本材料、身の回りの放射線を測定する機器(児童生徒用に複数台)、ならびにそうした機器の保管に要する機材、研究協力者の着用する実験着、児童生徒の安全な実験を確保するための保護着、各教科の指導に関する関連図書費が必要となる。 最後に、以上の学習支援プログラムを作成するための、先進的な取り組みを調査する必要がある。調査のための目的は大きく分けて2つあり、1つ目は、モデル推進の核となる学習支援プログラムの具体的作成について、自然史系博物館に加え、先進的な取り組みを行う小中学校を視察するものである。2つ目は、防災、エネルギー教育を推進する施設(防災関連ならびにエネルギー施設)を視察し、作成したプログラムを地域や学校へ向け、どう広報し、あるいはどう活用しているかを調査する。また、学会等での発表の際の旅費を考慮する。以上の調査ならびに発表費用として、旅費ならびに関連図書費、映像や画像など記録機器ならびに記録媒体費を計画している。
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