研究課題/領域番号 |
24501280
|
研究機関 | 滋賀県立琵琶湖博物館 |
研究代表者 |
中野 正俊 滋賀県立琵琶湖博物館, その他部局, 特別研究員 (40443460)
|
研究分担者 |
神山 保 滋賀大学, 教育学部, 教授 (50195690)
糸乗 前 滋賀大学, 教育学部, 教授 (90324558)
|
キーワード | 博物館・学校連携 / 博物館・地域連携 / 防災・エネルギー教育 / 学習指導要領 / 学校支援プログラム作成 |
研究概要 |
1,平成25年度における具体的実績内容 前年度に作成した防災・エネルギー教育に関する博物館作成モデルを学校や地域住民と協議しながら実践展開できた。具体的には、次の2点である。一つ目は博物館の知的資源を伝達した活動、二つ目は博物館の物的資源を学校や地域住民の来館によって紹介したり、貸し出したりする活動である。前者は学校教員や地域住民へ向けた指導者研修である。「一人の教師の向こうには40人の子どもたち、果ては80人の保護者(住民)がいる」ことを念頭に、教員の博物館利用をうながした。特に理科や社会科、総合的な学習の時間を切り口とし、学習指導要領にそった教員研修を行った。全国的に見れば、博物館が行う教員や地域住民を含めた指導者研修は決して珍しくはない。しかし、学習指導要領や教育課程を軽んずる傾向があったため、これまでは教員の参加率は高くはなかった。したがって今回は学校現場のカリキュラムや地域素材を意識しながら進めることによって、多くの教員の参加をうながすことができた。一方、後者では教員研修を受講した教員の所属学校からの校外学習である。特に、琵琶湖に植生するヨシが高波などの防波機能をもつといった防災学習につながった。また、ヨシの標本や展示物の貸出しを行いながら、作成したモデルを改善、改良していった。さらに、総合的な学習の時間では児童自らが身近な自然環境の放射線を測定したり、放射線の生活利用についての学習を進めたりした。また、小学校第5学年理科「ふりこのはたらき」の学習後には、先人による永久機関の模索など、エネルギー分野に関して児童に科学への興味や関心をもたせることができた。 2,平成25年度における研究の意義と重要性 (1)学習指導要領に加え、地域の実情にそった支援プログラムを作成し、実践できた点 (2)博物館が示す支援プログラムではなく、学校や地域と協働して作成し、実践できた点
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年6月、第2期教育振興基本計画が閣議決定された。本基本計画では、今後目指すべき教育の新たな方向性として、「知識を基盤とした自立、協働、創造モデルとしての生涯学習社会の実現」が示された。具体的には、「一人ひとりの自立した個人が、多様な個性・能力を生かし、他者と協働しながら新たな価値を創造していくことができる柔軟な社会を目指していく必要がある。」と明示された。つまり、このことから、博物館相当施設が本計画にそった活動を行うことは、学校だけでなく、地域に理解され地域に開かれるための一方途につながると考える。そのためには、人々がそれぞれのニーズに応じた多様な学習をあらゆる機会にあらゆる場所において能動的・自発的に行え、その学習成果を社会に生かしていくことができる博物館周辺環境を整える必要がある。この計画にあるように、人々が個々のニーズに応じた学習を進め、その成果を社会へ生かしていくためには、博物館などによる学校・地域支援地域本部等の設置をうながす必要があるだろう。ただ、国内における先行実践の中には、博物館などによる学校への行事支援や環境整備支援が中心となってしまい、そこからの一歩を踏み出せないといった課題も報告されている。また、学校の教育課程に沿った支援は容易ではなく、地域等との関わりが一過性になるといった声も聞かれる。今回の研究では、防災・エネルギー教育を切り口として、以上の実践課題の具体的解決に微力ではあるが寄与できている。本県でも防災やエネルギーに関する住民の意識は高くなっている。本研究により、博物館相当施設が、防災だけでなく減災に向けた展示活動、指導者研修を含むアウトリーチ、安全・安心なエネルギーの活用など、これまで蓄積してきた事業をベースとして積極的に進めることができると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
近年は人々の価値観が多様化している。地域へ目を転じると、昔ながらのつながりは影を潜め、互いに支え合い、学び合おうとする意識も希薄になりつつある。また、児童生徒の理科離れは一層深刻化している。この原因として教員の理科離れがあるのではないかとの指摘もある。教員養成の段階で社会教育施設と学校の連携が扱われていないことも一因と考える。こうした状況では、博物館が地域から意識として遠ざかりかねず、博物館への関心が低くなるなど、博物館が学校や地域に対する影響力は決して高まっていくとはいえない。 本研究では今年度、前年度までに作成したモデルを汎用化させていく。すなわち総合的な学習の時間や理科、社会科などの教科学習の中で、児童生徒学習支援プログラムを展開する。このことは従来の博物館・学校連携に散見された一過性のモデルを作らないことを意味する。学習指導要領や教育課程に沿った博物館活動を行うことが、博物館・学校連携をより進めると考えるからである。こうした取組によって、博物館のもつ価値が見直され、学校や地域との協働がより進むにちがいない。具体的には、モデルの採用地域において,学習前後における児童生徒の理科への意識が高まったかどうかをプログラムごとに調査する。汎用過程の追跡調査によって,内容の充実とともに,どういったパッケージがより採用されるかを明らかにするものである。 今年度は、本研究に取り組む最終年度である。これまでの成果と課題を滋賀大学の電子媒体ならびに学会等で伝達し、広める計画である。このなかでは、特に博物館と学校や地域等双方の互恵性を持続するための課題として提起したい。本研究は、初年度でエネルギー教育を、翌年度で防災教育を中心に研究実践を積んできている。こうした実践から得られた成果と課題を整理し、今後の博物館・学校・地域住民連携の充実へ向け、発信する予定である。
|