研究課題/領域番号 |
24501282
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
宮崎 真 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 特任助教 (80302355)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | モンゴル / 蒸発散量 / 土壌水分量 / 季節凍土 / 熱収支 |
研究概要 |
本研究はモンゴルの半乾燥気候の草原において、土壌水分量(SWC)と蒸発散量(ET)の観測データと陸面過程モデルの計算結果の比較検証を行い、陸面過程モデルによる水文過程に関わる要素の算出精度向上に必要な知見を得る事を目的としている。 今年度はモンゴル半乾燥気候の草原の観測データを用いて、SWCとETに関する解析を行い、ETとSWCの関係ならびにその年々変動と季節変化の特徴を明らかにした。次に陸面過程モデルMATSIROに1981年から2009年までの現地観測で得られた気象データ(気温、比湿、風速、気圧、降水量、放射量)を入力して計算した。その際、土壌の水理特性パラメータについて、グローバルなデータセットで用いられているパラメータを用いた実験(CTLラン)と現地観測を基にしたパラメータを用いた実験(OBSラン)の2つの実験を行った。モデルによる計算結果と2002年11月から2007年4月までのSWC、地温、正味放射量(Rn)、顕熱フラックス(H)、潜熱フラックス(LE:ETに同じ)の現地観測結果と比較検証を行ったところ、次のような結果が得られた。OBSランの方がCTLランに比べて全ての要素において再現性が向上した。両ランともに地温、RnとLEのモデルによる観測値の再現性は高かった。しかし、SWCについては、再現性が悪く、特に冬季の凍結時については、モデルの方が観測に比べてかなり高い値を示していた。これについては、モデルの性能だけでなく、観測ではSWCについて液体水分量のみ測定可能でモデルには含まれる凍結水分量を計測できないという観測方法の問題とも関連があると考えられる。 なお、本研究とは別経費で行った中国の草原でのMATSIROの計算結果と観測値の比較検証を行った研究によると、モデルによる各要素の再現性は中国の草原とモンゴルの草原での同様の傾向がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モンゴルの草原における観測データの解析ならびに陸面過程モデルによる計算環境の整備は終了した。陸面過程モデルによる計算の実施と水文過程に関する観測値との比較検証もおおむね順調に進んでいる。地温の再現性については、熱伝導率に観測値を基にした値を与えることで、観測値を再現できる事が分かった。しかし、凍結時の土壌水分量の再現性について、現状のモデルでの問題点が明らかとなった。モンゴルの草原は季節凍土帯に属しており、陸面過程モデルの精度向上の為には、凍結・融解時の水移動の過程について更なる検討が必要であることを示した。 さらに中国の草原における計算を別経費を用いて行った結果とも比較して、両地点での陸面過程モデルによる水文過程再現性についても明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究で明らかとなった凍結時の土壌水分量の再現性の問題点について整理する。次に算出精度向上の為に、まずは土壌の水理特性パラメータを変化させた場合の感度実験を行い、観測値との比較検証から、適切なパラメータセットについて検討する。パラメータセットの変更だけでは、再現性が向上しない場合、他の陸面過程モデルを参考にして、新たな過程を組み込むことを検討する。 昨年度までに別経費を用いて行った複数の陸面過程モデルの相互比較実験で得られた他の陸面過程モデルとの比較検証結果を基にして、本研究で用いている陸面過程モデルMATSIROの振る舞いの特性と位置付けを明らかにする。他の陸面過程モデルによる計算結果ならびにMATSIROによる計算結果と観測値との比較検証結果から、水文過程の再現性のモデル間相互比較を行う。MATSIROの方が他のモデルに比べて再現性が高い場合は、その要因について明らかにする。他のモデルの方が水文過程の再現性が高い場合、MATSIROに組み込んでいる過程と他のモデルに組み込まれている過程との比較を行うことによって、改良策を検討する。 本研究によるこれまでの成果を取りまとめて、査読付きの研究論文を執筆して学術雑誌に投稿し、受理を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
経費の節減の結果生じた使用残について、成果発表および情報収集の為の国内・国際学会等参加の旅費に使用する。
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