ヤマセ吹走時の地形効果を検証するため蔵王山で観測していたが、今年度はお釜付近の火山活動の活発化により、データ回収が出来なかった。そのため、昨年度のデータにより解析を進めた結果、季節進行に伴う三陸沖海水温の上昇により、ヤマセが湿潤化し、風下側でも日照不足や降水量の増加傾向が認められた。 また、過去50年間にわたる梅雨明け前後の気団解析をさらに進めた結果、1977年と1993年を変換点として、梅雨明けの様式の不連続的変化が認められた。特に1993年以降は、西南日本の前線帯が消滅し梅雨明けした後も東北日本に前線が残り、東日本で梅雨明けが不明瞭となる傾向が顕著であることがわかった。 研究分担者の高橋信人は、日本付近の大気循環場の様子を代表する前線帯の動きに注目して,過去60年間における日本の季節進行やその長期変化傾向の実態を調査した。前線頻度分布データは,NCEP/NCAR再解析値の850hPa面における温位と相当温位のデータをもとに作成したものを用いた。その結果,日本付近にみられる前線分布の長期傾向として,1.7月中旬~8月中旬に前線頻度が増加する傾向,2.6月下旬~8月中旬に前線の走向が北西-南東になる傾向などが明らかになった。このうち,1.は近年の夏季における北冷西暑パターンの頻出,2.は西日本での豪雨頻度の増大との関連性を示唆するものであった。 研究代表者の境田清隆による1993年以降の梅雨明け様式の変化は高橋信人の結果1.と調和的であり、温暖化に伴う夏季天候の重要な変容の1つであるといえる。すなわち東北日本では7月下旬から8月上旬にかけて梅雨前線が留まり、梅雨明けが不明瞭となる。それが海水温の上昇効果と相俟って、ヤマセ型冷夏は低温の度合いこそ減じるものの、湿潤ヤマセとして東北日本の夏季天候に影響を与え続けるものと考えられる。
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