研究課題/領域番号 |
24501286
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
濱田 浩美 千葉大学, 教育学部, 教授 (60292653)
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研究分担者 |
大八木 英夫 日本大学, 文理学部, 助教 (50453866)
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キーワード | 地球温暖化 / 湖沼 / 水温 / 循環 / 水温上昇 / 結氷 |
研究概要 |
本研究では日本国内の湖沼の底層水温上昇と湖水全体の水温変化に伴う結氷現象の変化に着目し,国内湖沼の今後の温度上昇が湖沼環境に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。現在調査対象としている湖は摩周湖(212m),支笏湖(360m),倶多楽湖(148m),十和田湖(327m),田沢湖(423m),本栖湖(122m)である。このうち,摩周湖,倶多楽湖,十和田湖,田沢湖には温度ロガーを設置し連続的な水温データを取得している。それぞれの湖沼では多機能プロファイラーを用いて,水温,電気伝導度,溶存酸素量,クロロフィル量,濁度のデータを0.1mの高密度で観測するとともに,所定の深度で採水を行い,pHの測定を行っている。観測は基本的に春季循環期,夏季停滞期,秋季循環期の3回実施した。25年度に結氷した倶多楽湖では氷殻下の観測も行い,冬季停滞期の水温・水質分布を明らかにした。 これまでに明らかにできたことは,今まで毎年結氷していた摩周湖や倶多楽湖は年により結氷しないことが生じ始め,今年度は倶多楽湖は結氷したが摩周湖は結氷しなかった。この差はわずかな気温差であり,今までは双方の湖沼で結氷するかしないか,同時に発生することが多かった。このように倶多楽湖だけが結氷する現象は稀と考えられ,今年度のデータは貴重である。また,結氷しなかった摩周湖と結氷した倶多楽湖では春季循環期の期間に大きな差が生じる可能性が考えられ,湖水の十分な混合が生じるか否かが今年の5-6月に明らかになると考えられる。観測対象湖沼のうち,本栖湖は,冬季停滞期は発生せず,3月下旬まで冷却が進み,その後は急激に夏季停滞期に向かう温度上昇が確認され,秋季循環のみの年1回の循環湖であるでことがわかってきた。 水温ロガーのデータは設置許可に時間がかかり,通年データは得られていないが,現在はデータの蓄積が進んでいる状態にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
温度ロガーなどの設置許可,調査許可に時間がかかったが,現状では各方面から許可を得て,今年度当初には設置も終了し,順調にデータを蓄積しつつある。各地の定期的な観測も実施しており,各季節における水温水質の鉛直分布も明らかになってきた。
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今後の研究の推進方策 |
①継続調査・・・水温ロガーの設置を継続し,設置水深等の変更が必要であれば行う。 ②定期観測の実施・・・各湖沼では,夏季,結氷前,解氷後の3回現地調査を行い,ロガーデータの回収を行う。観測項目は水温,電導率,pH,DO,濁度,クロロフィル量の鉛直分布と透明度である。また,表層水,躍層上,下,底層水の採水を行い分析を行う。 ③まとめ・・・成果報告書の作成を行うとともに,学会発表を行う。これまでのデータを解析し,各湖沼の結氷条件を導き出し,実際に平成23年冬から平成25年春にかけての結氷が予測式通りに生じているのかを検証する。また,結氷現象と底層水温の上昇率の検討は,水温の継続観測から得られたデータと現地観測から得た水温鉛直プロファイル,収集データなどと比較し,日本の湖沼環境の将来予測を評価する手法を確立する。 上記に加え,鉛直データの蓄積がある湖沼を文献調査し,本研究で実施している観測との整合性を把握し,将来予測の応用性を評価する。
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