地球温暖化による雪氷域の氷河減少や生態系への影響は,世界各地で報告され,深刻化していることは言うまでもない。本研究では,日本国内の湖沼の底層水温上昇と湖水全体の水温変化に伴う結氷現象の変化に着目し,国内大深度湖沼の今後の温度上昇が湖沼環境に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。 本研究では,結氷年と非結氷年が出現していて,すでに継続観測している摩周湖(212m)に加え,倶多楽湖(148m)においてもロガーによる継続的な水温観測を実施するとともに、不凍湖の支笏湖(360m),十和田湖(327m),田沢湖(423m),本栖湖(122m)において水温・水質の鉛直分布の観測を行った。鉛直分布測定にはJFEアドバンテック社製Rinko-Profilerを使用し,観測項目は0.1m毎の水温,電気伝導度,溶存酸素量,クロロフィル,濁度である。 摩周湖では結氷年の湖面は冬季の氷により蓋がされ,冷却は100m付近までに限定され,3℃程度を示す。一方,非結氷年は4月上旬に100mの水温が2℃まで低下しており,湖水全体が冷却していることを示す。底層部の溶存酸素量は結氷年と非結氷年では相違が見られ,結氷年では循環により底層に十分な酸素が供給されていない。 田沢湖では夏季の表層水温は24℃に達し,80mまで強固な水温躍層を示している。DOは100mまで過飽和でそれ以深も96%以上と十分な酸素がある。6月のDOは底付近でも96%を超えていることから春期に酸素の供給が行われていることを示している。田沢湖は3/22ごろ表層の水温は4.01℃の最低温度を示していることから,3月中に全循環をし,底層まで酸素の供給が行われると考えられる。今後,地球温暖化により,冬期の水温が4℃以下にならなくなると循環形態や生態系に大きな影響が生じると考えられる。
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