研究課題/領域番号 |
24501288
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
佐々木 明彦 信州大学, 山岳科学総合研究所, 研究員 (20608848)
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研究分担者 |
山縣 耕太郎 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (80239855)
鈴木 啓助 信州大学, 理学部, 教授 (60145662)
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キーワード | 亜高山帯 / 地表環境 |
研究概要 |
本研究は,これまで議論されることがほとんど無かった亜高山帯斜面における地表環境特性を定量的に捉え,同時に亜高山帯針葉樹林の動態を明らかにして,亜高山帯における地表環境特性と森林動態の関係を明確にするものである。平成25年度は,前年度の調査を踏まえて以下の調査・研究を遂行した。 ①実生・稚樹のモニタリング:常念岳の亜高山帯において,林床の詳細調査を実施するために設定したコドラート(2m×2m)において,実生の分布状況の変化を記録した。また,2つのコドラートを含む範囲でベルトトランセクト法による毎木調査を稚樹以上の樹木に対して行い,森林構造を記録した。また,新たな調査地として,妙高火打山でモニタリングサイトを選定した。 ②地表物質移動量の観測:常念岳の亜高山帯に設置したコドラートの内部およびその周囲において,白砂マーカー法による地表物質移動量の観測を行った。また前年度に設置したセディメント・トラップを用いて,期間毎の物質移動量を観測した。 ③気象観測:常念岳で林内気温と地温の観測を継続した。また,比較研究として蔵王火山の亜高山帯での気温観測を継続した。新たな調査地として,妙高火打山の亜高山帯において気温と地温の観測を開始した。 ④積雪観測:積雪表面の測量と無積雪期の地表の測量を行い,その差分から積雪深分布を明らかにした。また,積雪グライド計を設置し,積雪グライドの観測を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の当初の計画では,前年度に選定した詳細調査地点において,地表環境と実生・稚樹のモニタリングを実施することが予定されていた。それをふまえて,常念岳の亜高山帯に詳細な現地調査地を2箇所設定し,そこでの実生・稚樹の分布の変化を記録し,それらの動態を明らかにした。セディメント・トラップと白砂マーカー法によって地表物質移動の様式を明らかにし,物質移動量を概算できた。気温・地温の観測結果を整理し,地表物質移動に関わる温度環境を検討中である。また,GPS測量にもとづいて亜高山帯の積雪分布を明らかにする手法を確立した。以上の観点から,おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
常念岳亜高山帯の詳細調査地2箇所において,セディメントトラップと白砂マーカーを用いた地表物質移動量の観測を継続する。また,積雪の地表に対する影響を評価するために,積雪グライド計を用いて積雪グライド量を測定する。これと並行して,平成26年度も消雪以降は1ヶ月に1回程度,コドラート内の実生・稚樹の分布を記載し,その変化を記録する。また,気象データを順次回収し,気温・地温・降水の特性を整理する。また,詳細調査地における調査結果を客観化するため,妙高火打山にも詳細調査地の増設を検討する。また,各調査地では,地形および土層の特徴を明らかにし,テフロクロノロジーや放射性炭素年代測定にもとづき地形および土層の編年を行い,地表環境変遷史を考察する。 詳細調査地それぞれの地表物質移動量の観測結果,気象観測結果,積雪環境の観測結果を整理し,地表環境特性を明確化する。そして,一方で明らかとなる森林の構造やその動態に対する地表環境特性の影響をオーバーレイ解析で明らかにする。以上の成果は順次学会で発表し,学術論文に報告する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は放射性年代測定用の試料を採取していないため,その外注分の予算を消費しなかった。その試料は次年度に採取予定であるため,次年度に使用額が生じた。 放射性炭素年代測定を4点外部委託する。この費用の一部として78,222円を繰り越した。このほか,月1回程度のデータ回収を行う野外調査のための交通費,学会参加のための旅費,学術論文投稿のための投稿料を支出する。
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