研究課題/領域番号 |
24501289
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
堤 浩之 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60284428)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 2011年東北地方太平洋沖地震 / 2011年福島県浜通りの地震 / 正断層 / 地震断層 / トレンチ掘削調査 / 誘発地震 / 断層変位地形 |
研究概要 |
研究対象地域の空中写真を判読し,予察的な活断層分布図を作成した.その結果,2011年4月の福島県浜通りの地震で破壊した湯ノ岳断層のさらに北東に分布する赤井断層や二ツ箭断層に沿って,第四紀後期の活動を示唆する地形が断続的に認められた.これらの断層について,予察的な現地調査を行った. 福島県浜通りの地震で破壊した井戸沢断層については,2011年9月に地震断層の南端に近いいわき市田人町黒田掛橋でトレンチ掘削調査を行い,ひとつ前の活動時期が12,500~17,000年前であることが明らかとなっている.その追加調査として,2012年7月に地震断層の北端に近い田人町石住綱木でトレンチ掘削調査を行った.長さ約10m,深さ約3mのトレンチを掘削し,段丘礫層とそれを覆うフラッドローム堆積物を変位させる西傾斜の正断層が出現した.地層の堆積・変形構造から解読できる断層活動の痕跡は,2011年のもののみであった.礫層中の腐植土層から採取された植物遺体の年代は約25,000年前であるため,掛橋トレンチで解読された1万数千年前の断層活動の際には井戸沢断層の北部は活動しなかった可能性がある.掛橋地区のトレンチ掘削調査では,2011年の地震の上下変位量は約1.2mであるのに対して,先行するイベントの上下変位量は約30cmと顕著に小さかったので,先行する地震の変位量や破壊領域が2011年よりも小さかった可能性がある. これらの現地調査と平行して,2011年4月の地震発生以来行った地震断層調査や断層変位地形調査,および掛橋地区のトレンチ掘削調査の結果を論文としてまとめた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2011年4月福島県浜通りの地震の発生以来行ってきた地震断層調査や断層変位地形調査については,本研究によって遂行した調査の結果も含めて論文として公表することができた.また,2011年9月に行った掛橋地区のトレンチ掘削調査についても,その結果を速報として論文化できたので,本研究の出発点となるデータはすべて公表できたことになる. 断層変位地形調査やそれに基づくトレンチ掘削地点の選定については,おおむね予定通りに進行している.断層の活動履歴調査については,2012年7月に井戸沢地震断層の北端付近でトレンチ掘削調査を行うことができ(掘削費用は科学技術振興機構の国際緊急共同研究・調査支援プログラムによる),井戸沢断層の活動履歴に関する重要なデータを得ることができた.井戸沢断層上の2地点で行った掘削調査により,研究地域の活断層の活動間隔が比較的長い(数万年のオーダー)であることが明らかとなり,今後の掘削調査(掘削地点や掘削するトレンチの規模など)を立案する上で重要なデータが得られた.
|
今後の研究の推進方策 |
地震断層の調査はほぼ完了したので,今後は断層変位地形や断層露頭の調査,および変位基準となる段丘面の編年を中心に研究を進める.また,研究対象地域に正断層が特異的に分布する地質学的背景を明らかにするために,海成段丘の分布高度や海域も含めた広域の地質構造に関する既存データの収集と解析を行う. これらと平行して,トレンチ掘削調査候補地点を複数選定し,地権者や関係機関との交渉をはじめとする準備を進め,年度の後半に掘削調査を行う.
|
次年度の研究費の使用計画 |
2012年度末まで継続した科学技術振興機構の国際緊急共同研究・調査支援プログラムによって,現地調査のための旅費やトレンチ掘削調査によって得られた試料の放射性炭素年代測定費用の一部をまかなうことができたので,当該研究費が生じた.この研究費については,平成25年度に行う予定のトレンチ掘削調査費用に組み込む.研究対象地域の活断層の活動度が低く,活動履歴を十分に明らかにするためには当初予定していたよりも大規模なトレンチを掘削する必要がある.それに伴い掘削費用が増加するので,当該研究費でその増加分をまかなう予定である.
|