研究課題/領域番号 |
24501292
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
森脇 広 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (70200459)
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研究分担者 |
奥野 充 福岡大学, 理学部, 教授 (50309887)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | テフラ / 地形発達 / 国分平野 / ボーリング / 化学分析 / 南九州 / 古環境 / 沖積層 |
研究概要 |
① 鹿児島湾奥北岸に面する国分平野でボーリング掘削とそのコアの堆積物の解析を行った.今回の掘削は,これまでよりさらに精度のよい環境変化を得るために,既存の掘削地点の間で行った.掘削地点は現在の天降川河口から4.8km内陸の天降川氾濫原にあり,その標高は6.7m,掘削深度は60mである.このコアでは,深度48m以下に12m以上の厚さで基底礫層が出現した.これより上位は,粗粒砂堆積物を主体として,中・細粒砂,礫の堆積物が介在し,変化に富む.貝化石は認められず,全体としては氾濫原の堆積物と考えられる.深度46.33mと24.50mに一次堆積の降下軽石が存在する.これまでの国分平野構成堆積物のテフラ編年研究からみると,前者のテフラは,桜島薩摩テフラ(Sz-S,12,900 cal yr BP),後者は桜島高峠3(Sz-Tk3, 10,600 cal yr BP)と推定される.Sz-Sは基底礫層の示す古天降川床礫に近い層準にあることから見て,最終氷期最盛期以降,13,000 cal yr BPごろまで,この地点には扇状地が形成されていたと考えられる.この結果は,これまで得られている地形発達と整合する.鬼界アカホヤ火山灰に特有のガラス質火山灰は認められない.周辺に完新世段丘が分布していることから見て,縄文海進最盛期の堆積物は,現在の氾濫原にある地点では削剥されていると考えられる.② 南九州の過去3万年間のテフラの層位・分布調査および資料の採取を道路工事や考古遺跡発掘などで露出した断面で行った.そのうち特に最終融氷期の古環編年に役立つ桜島起源の主要テフラの化学分析を行った.③ 国分平野で既存ボーリングコアの化学分析を行い,桜島テフラ群に対比されるテフラを同定した.④ 海底コアについては,今年度はこれまでトカラ海峡東部において採取したテフラ分析の化学分析のための前処理を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終氷期以降の古環境変化と海面変化の高精度編年は,資料収集の優位性から特に国分平野でのボーリング掘削によって進められてきた.今回追加したボーリングコア資料は,古環境変化の空間的な高精度化に貢献する.さらにテフラの化学分析による同定指標の蓄積は,確度の高い編年指標を提供し,海岸域の古環境編年の高精度化関してモデル的な地位を確立するのに着実に寄与していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
この研究課題を進展させるためには,テフラ同定資料の充実をさらにはかる必要がある.これまで行ってきた電子線マイクロアナライザーを駆使したテフラの化学組成の整備は特に重要であるので,この分析をさらに推進する.陸上での古環境変化の高精度化にとって,その変化と南九州周辺海域の海底コアで得られている高精度な古環境変化との対比は重要である.これまでの研究で,東シナ海の海底コア編年との対比が一部なされている.現在太平洋側の海底コアのテフラ分析の処理を行っており,これを進めることによって,南九州の陸上と海底の古環境編年の高精度化と氷床コアとの高精度対比はさらに進展し,モデル的な高精度古環境編年図の確立がさらに進展することが期待される.
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次年度の研究費の使用計画 |
①大隅半島の太平洋沿岸,肝属平野において最終融氷期以降の古環境変化,特に海面変化と海進の過程を求めるために,2本の機械ボーリング掘削を行う.1本は最も深い沖積層の得られる肝属川河口付近で,深度約80m,他の1本は海進がもっとも内陸に及んだと推定される場所で,深度約20mのオールコア採取を行う.②南西諸島―種子島,喜界島,屋久島,薩摩硫黄島,竹島―,および大隅半島,薩摩半島においてテフラ編年の調査と試料採取を行う.③高知大学総合コアセンターにおいて,海底コアの採取を行う.④テフラに含まれる火山ガラスの化学組成を求めるために,電子線マイクロアナライザーを使用する.⑤研究発表のために学会(日本地理学会,第四紀学会)に出席する.
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