研究課題/領域番号 |
24501292
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
森脇 広 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (70200459)
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研究分担者 |
奥野 充 福岡大学, 理学部, 教授 (50309887)
永迫 俊郎 鹿児島大学, 教育学部, 准教授 (70709518)
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キーワード | 南九州 / 鹿児島湾 / 沖積低地 / 最終融氷期 / テフラ / 古環境 |
研究概要 |
南九州,大隅半島の肝属平野の河口近くにおいて,最終氷期最大海面低下期以降の環境変化を解明するために,深度75mの機械ボーリングを行った.その結果,約70m付近において沖積層基底礫層を確認した.基底礫層の下位には不整合面を介して,大隅降下軽石層が認められる.基底礫層上位には,中粒砂を主体とする砂質堆積物が堆積している.この堆積物から,貝化石やテフラ,微化石分析用の試料を採取し,古環境変化の有益な試料を得た.このボーリングコアは最終氷期最盛期以降,特に最終融氷期の海面変化,環境変化を知る上で,重要な資料である.ここから,指標テフラを見いだし,同定することによって,これまでテフラによる高精度編年がなされている国分平野や東シナ海海底の古環境変化との高精度対比が可能となる. 桜島テフラ群の火山ガラスの化学組成をEPMAによって求めた.これまで,他の方法では,桜島テフラ群の各テフラの識別は困難であったが,火山ガラスの化学組成には意味のある違いがあり,これによって桜島テフラの各テフラの同定が可能となった.これを,桜島北東方に位置する燃島の海底堆積物のテフラ同定に適用した.この堆積物は鹿児島湾の古環境が詳細に明らかにされており,野外での特徴と火山ガラスの化学組成によるテフラ同定の結果,桜島テフラ群の主要なテフラが識別された.この結果,鹿児島湾の古環境変化の高精度編年を可能となり,周辺域の古環境変化との高精度対比を行うことができた. 南西諸島,喜界島の完新世砂丘と更新世砂丘堆積物からテフラを見いだした.これは,これらの同定は南九州の広域な高精度古環境編年を行う上で意義ある知見と考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は予定通り肝属平野でボーリングを行い,首尾よく最終氷期最盛期の基底礫層をとらえ,これ以降の堆積物を採取することができた.テフラ編年は,特に桜島のテフラの識別が火山ガラスの化学組成によって可能であることが確かめられ,この同定指標によって,桜島テフラ群が介在する南九州の各種堆積物と古環境の広域な高精度編年が可能となった.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の目的は,南九州の最終氷期以降,特に最終融氷期の各種古環境変化を編年し,これをテフラにより対比し,南九州の各種古環境編年の高精度統合化にある.これまでいくつかの古環境の編年をテフラによって明らかにしてきたが,次年度は,これまで行ってきたテフラの分析を推進し,これによって古環境編年の精度を上げて,全体を統合した高精度地域古環境編年図を作成し,これをグローバルな環境編年の中に高精度で位置づける.
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度において,当初ボーリング掘削費として90万円の予算を計上して,予算の執行を進めていたが,予想に反し,ボーリング掘削費が高騰したことにより,全体の予算,特に旅費に不足の恐れが生じたため,30万円の前倒しを行った.しかし,前倒し分を当てた旅費は,予定額よりも少ない執行であったため,最終的に395,750円の繰り越しとなった. 繰越金は,野外調査と学会発表のための旅費,資料整理の謝金に充てる.
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