研究課題
鹿児島湾沿岸のテフラ編年を行った.重要な知見の一つは,1779年の桜島安永噴火に伴って隆起した新島の海成堆積物に関するもので,その堆積物から鹿児島湾の晩氷期以降の古環境変化が明らかにされてきた.これを,テフラ編年に基づき最終氷期最盛期以降の湾岸低地の古環境変化と対比することで,統合的な古環境変化像を進展させることができる.今回,島の南北に露出するテフラの同定を行い,C-14年代調査と併せて高精度の年代軸を確立した.ここには厚い水中火砕流堆積物(燃島シラス)を基本指標として,この上位に10枚以上のテフラが存在する.これらのテフラの野外観察と室内分析により同定を行った結果,最上位から,桜島文明,桜島末吉,米丸,桜島上場,桜島高峠3の各テフラの一次堆積物,桜島薩摩テフラの二次堆積物,燃島シラスの二次堆積物を認定した.この層序,堆積状態は南北の露頭できわめて類似し,燃島シラスとその上位の堆積物の時期が南北で異なるという従来の報告とは異なった新知見を得た.特に最終融氷期の南九州の陸上と海底の古環境,人類史を統合的に高精度編年する上で重要な桜島薩摩テフラに注目した.燃島シラスの上位にある軽石堆積物を詳細に試料採取し,火山ガラスの屈折率と化学組成の分析を行った.その結果,その多くは,燃島シラスの二次堆積物で,Sz-Sの一次堆積物は見いだせなかった.しかし,燃島シラスの二次堆積物の中にSz-Sの軽石を同定し,Sz-Sの二次堆積物が,燃島シラスの直上付近まで存在しており,Sz-Sの降下層準は燃島シラスにきわめて近く,燃島シラス上のシルト堆積物は最終融氷期後半,新ドリアス期以降のものであることが明らかとなった.それは.測定したC-14年代とも調和する.これらの知見を基に,テフラを基準として,さらに進展させた南九州の人類・古環境変化の高精度統合化ダイヤグラムを作成した.
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鷹野・松崎(編)「敷領遺跡(十町地点・下原地点)の調査」文部科学省科学研究補助金,基盤研究(B)「古代村落の土地利用形態の研究」
巻: 古代村落の土地利用形態の研究 ページ: 57-60