研究課題/領域番号 |
24501293
|
研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
菊地 俊夫 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (50169827)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 大都市近郊農村 / ルーラリティ / リハビリテーション / 上部構造 / 下部構造 / 介入介在構造 / ボンディング / バンディング |
研究実績の概要 |
大都市近郊では、都市化や混住化により、農村景観や農村コミュニティが脆弱化し、ルーラリティが不健全なものとして存在するようになっている。他方、大都市遠郊でも、過疎化や高齢化、および商品生産の欠如から、農村景観や農村コミュニティの脆弱化が決定づけられている。このような不健全な状態のルーラリティを回復させ、健全な状態の農村環境を根づかせるリハビリテーションの地域システムを構築することが本研究の目的である。3年目の研究では、東京大都市圏におけるリハビリテーションの地域システムをモデルとして精緻化し、そのモデルの適応性を実証研究から検証した。 リハビリテーションの地域システムモデルは、景観や生活文化や人間活動の上部構造と、自然基盤や社会基盤、および経済基盤の下部構造とで構成され、それらを結ぶつなぎ手としての介入介在構造によって体系化されている。この介入介在構造の関わり方がリハビリテーションの仕方や効果に大きく影響していることがわかった。具体的には、介入介在構造は農家の結びつきの存在形態と関係しており、地域内の農家間の結びつきを示す「ボンディング」と、地域外の農家や組織と結びつく「バンディング」が介入介在構造の重要な仕組みであることがわかった。東京大都市圏の実証的調査によれば、ルーラリティのリハビリテーションは「ボンディング」によってある程度進むことができるが、さらに発展するためには「バンディング」の仕組みが加わらなければならない。バンクーバー大都市圏やシドニー大都市圏の実証的な研究では、近郊農村のルーラリティが「ボンディング」の結びつきを基盤にして、「バンディング」の結びつきに発展することで円滑に回復していることが確認された。このようなルーラリティのリハビリテーションモデルに関する実証的な研究を蓄積し、モデルの検証を進めることが次年度に向けての課題となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ルーラリティのリハビリテーションに関する地域システムのモデルの検証を東京大都市圏やその他の国内の都市圏で検証を行った。これらに関しては、2014年の国際地理学会(ポーランド・クラコフ)や社会・経済国際フォーラム(韓国・ソウル)などの国際会議でも発表し、国内外の研究者との議論を進めた。さらに、外国の大都市圏におけるモデル検証のための実証研究を進めることもできた。
|
今後の研究の推進方策 |
大都市近郊農村におけるルーラリティのリハビリテーションに関する地域システムモデルを精緻化し一般化するため、外国の大都市圏における実証研究を深化させる。具体的には、シドニー大都市圏やバンクーバー大都市圏、およびロンドン大都市圏やバンコク大都市圏での実証研究の補足調査を行い、ルーラリティのリハビリテーションモデルと研究のまとめを行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度末にデータ解析用と野外でのデータ記録用にPCを購入したが、その支払いが次年度になることと、シドニー大都市圏など南半球の調査が3月から4月と年度をまたぐため、その支払いも次年度になるため。
|
次年度使用額の使用計画 |
年度末に購入した備品と年度末に行った調査の旅費が今年度に支払われる。また次年度については、海外でも研究成果発表や補足調査などは10月までに行うようにする。具体的には、バンクーバー大都市圏とロンドン大都市圏の調査を8月・9月に行う予定である。加えて、8月にモスクワで開催される国際地理学会で研究成果の発表を行う予定にしている。
|