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2013 年度 実施状況報告書

立山弥陀ヶ原湿原の土壌形成に対する黄砂の寄与とアジアの砂漠化の推移

研究課題

研究課題/領域番号 24501301
研究機関富山市科学博物館

研究代表者

朴木 英治  富山市科学博物館, その他部局等, 学芸課長 (10373482)

研究分担者 渡辺 幸一  富山県立大学, 工学部, 教授 (70352789)
堀川 恵司  富山大学, その他の研究科, 准教授 (40467858)
キーワード黄砂 / 気候変動
研究概要

現在の立山の黄砂の動態観測:これまでの観測と同様、降水中の懸濁粒子濃度がある特定の標高で高まり、時には、他の観測点の2倍以上にも増加する現象が見られた。このような場所では、富山市の市街地よりも懸濁粒子の濃度が高くなる場合も観測された。また、霧水は同じ観測点で採取した降水と比べて粒子の個数濃度が1桁程度高くなる事が分かった。さらに、植物群落の表面を模した代理表面観測では降水採取器による試料と比べて粒子の濃度が0.8(一試料のみ)~1.9倍程度高くなり、植物が霧水やエーロゾルを捕捉することで、より多くの粒子状物質を沈着させることが分かった。
降水中に存在する粒子の内、550℃で1時間加熱後も残留する強熱残渣粒子を単純に黄砂粒子と考えていた。しかし、550℃加熱で消失する炭素系の黒色粒子(煤)の濃度と強熱残渣粒子濃度との対比から、降水中に懸濁する粒子には、石油燃焼起源と考えられる粒子、石炭燃焼起源と考えられる粒子、黄砂と考えられる粒子の少なくとも3種類が存在することが分かった。
泥炭試料の解析準備:立山弥陀ヶ原湿原で採取した泥炭試料(環境省、森林管理署許可済み)の長さは60cmで、深さ51cmの所にアカホヤ火山灰層(7300年前(湖沼堆積物による計測))を確認した。この泥炭の11カ所について炭素14による年代測定を行い、最下層付近は8260年前であることがわかった。年代測定で得られた興味深い結果として、アカホヤ火山灰層を7300年前とした場合、その後2500年程度は泥炭の堆積速度が非常に遅く、1000年分程度の泥炭が残っていない可能性もある。弥陀ヶ原湿原のアカホヤ火山灰の堆積年代は炭素14による年代測定で6500年前と報告されており、湖沼堆積物から計測した値と比べて1000年ほどのずれが出るが、この火山灰層の直上と直下の堆積年代を測定することで、ずれの原因が分かりそうである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

降水観測と降水中の懸濁物濃度、懸濁物の粒径別個数濃度の計測については、計測方法も確立し、予定どおり行うことが出来た。また、霧水観測やエーロゾル観測も予定どおり行うことが出来た。
立山弥陀ヶ原湿原から採取した泥炭の年代測定については、一部確認したい試料があるが、予定どおり完了し、今後の解析に十分使用できる試料であることを確認した。
この泥炭に占める土壌粒子の重量比や土壌粒子の粒径別個数濃度の計測は4月中旬から開始する。この計測作業は、平成26年度から新たに追加する共同研究者が行う花粉分析や微量成分分析と連携を取りながら計測を進める必要があり、あえて、処理を停止していた。この計測は平成26年の夏頃までには完了する予定である。

今後の研究の推進方策

降水観測を例年と同様、立山の10カ所の観測点(標高680m~2,450m)で行い、これと合わせて代理表面による観測、霧水観測、大気中のエーロゾル観測を行う。
立山弥陀ヶ原湿原で採取した泥炭試料中の土壌粒子の重量、土壌に占める比率、土壌粒子の粒径別個数濃度の計測を夏頃までに完了する。これと平行して、泥炭中の花粉分析と微量元素成分の分析を行う。
得られたデータを基に、秋に開催される学会等で発表し、研究内容の整理を行う。また、内容がまとまってきたら、学会誌などに投稿する。

次年度の研究費の使用計画

次年度使用額228,730円のうち、研究代表者の分は10,023円で、研究分担者の分が218,707円である。研究分担者の次年度使用額が多かった理由は、霧水や大気観測などにかかる経費が予定よりも少なくて済んだためである。
平成26年度に共同研究者を1名追加するため(承認済み)、研究経費予算額40万円の内、25万円を研究代表者に、10万円を新規に追加した研究分担者に、5万円を従来からの研究分担者に、配分する。これに平成25年度の次年度使用額を組み入れる。
研究代表者の分担金で弥陀ヶ原湿原の泥炭試料中のアカホヤ火山灰層の直上と直下の層について炭素14による年代測定を追加で行う。アカホヤ火山灰層の直上の2500年分の土壌の泥炭の生成速度が非常に遅いか、1000年分程度の泥炭が欠落している可能性が見えてきたためである。残りの費用は、学会発表旅費と観測・計測用の消耗品費とする。新規に追加した研究分担者は、泥炭試料の花粉分析や微量元素成分の解析をとおして立山の古環境を解明する。分担金は主に分析経費と学会発表旅費等に使用する。従来からの研究分担者は霧水や大気の観測経費と学会発表旅費等に使用する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Measurements of aerosol number concentrations and rainwater chemistry at Mt. Tateyama, near the coast of the Japan sea in central Japan: On the influence of high-elevation Asian dust particles in autumn.2013

    • 著者名/発表者名
      Koichi Watanabe and Hideharu Honoki
    • 雑誌名

      J. Atmos. Chem.

      巻: 70 ページ: 115-129

    • DOI

      10.1007/s10874-013-9258-5

    • 査読あり
  • [雑誌論文] サルフェイトモニターによる富山県の平野部および山岳域における硫酸塩粒子の計測2013

    • 著者名/発表者名
      渡辺幸一、成瀬功、石田幸恵、上原佳敏、曹仁秋、朴木英治
    • 雑誌名

      エアロゾル研究

      巻: 28 ページ: 140-149

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 立山における酸性雨および懸濁粒子観測結果(2012)2013

    • 著者名/発表者名
      朴木英治・渡辺幸一
    • 雑誌名

      富山市科学博物館研究報告

      巻: 37 ページ: 89-102

  • [学会発表] 降水によって立山西斜面と富山市に沈着する黄砂に関する研究

    • 著者名/発表者名
      朴木英治・渡辺幸一
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2013年大会
    • 発表場所
      幕張メッセ
  • [学会発表] 立山西斜面で採取した降水中に懸濁する粒子状物質の沈着量と個数濃度

    • 著者名/発表者名
      朴木英治・渡辺幸一
    • 学会等名
      第54回大気環境学会年会
    • 発表場所
      新潟コンベンションセンター
  • [学会発表] 中緯度地域の対流圏における水・物質循環のモニタリングプラットフォームとしての立山

    • 著者名/発表者名
      朴木英治・檜山哲哉・渡辺幸一
    • 学会等名
      第三回同位体環境学シンポジウム
    • 発表場所
      総合地球環境学研究所
  • [学会発表] 立山の降水中の黄砂について

    • 著者名/発表者名
      朴木英治
    • 学会等名
      富山市科学博物館研究発表会
    • 発表場所
      富山市科学博物館

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公開日: 2015-05-28  

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