研究課題
HTLV-1(Human T cell Leukemia Virus Type-I)はヒトT細胞に感染し、極めて悪性度の高い末梢血T細胞腫瘍である成人T細胞白血病、ATL (Adult T cell Leukemia)を引き起こす。しかしHTLV-1の感染がどのように細胞を腫瘍化するのか未だ不明な点が多い。我々はこれまで、ウイルスRNAの安定化と核外輸送を司るHTLV-1 Rexが自己のゲノムRNAを安定化に適した細胞内環境を整備するため、宿主細胞のmRNA品質管理機構(NMD)を抑制することを見出した。本研究では、RexによるNMD抑制の分子機構を明らかにすること、そしてこのようなRexの作用によって感染T細胞にどのような傷跡が残り、腫瘍化に関係するのかを明らかにすることを目的に実験を行った。最初の2年間で、Rexタンパク質のN末に近い領域が、NMD抑制機能に深い関わりを持つことを発見した。また、ヒトT細胞株CEMにRexを過剰発現させ、遺伝子発現プロファイルの変化をマイクロアレイによって解析した結果、約9000個の遺伝子発現パターンが、コントロール細胞に比べ有意に変化しており、そのうち約85%の遺伝子発現が低下していた。さらにin vitroでのHTLV-1感染実験を可能にするため、HTLV-1感染性クローンプラスミドからのウイルス粒子の産生を試みた。最終年度では、Rexによる遺伝子発現プロファイルの変化を詳細に解析した結果、E2F経路に関わる遺伝子が過剰発現し、炎症応答に関わる遺伝子発現が低下していることがわかった。またRexがどのような細胞内タンパク質と相互作用してNMDを抑制しているのか解明するため、His-Halo-Rexの哺乳類細胞内での過剰発現系と、タンデム・アフィニティ精製系の確立を行った。今後はRexと共沈するタンパク質をMS解析によって同定する予定である。
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Cancer Sci
巻: 印刷中 ページ: 未定
doi: 10.1111/cas.12639
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