研究課題/領域番号 |
24501308
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研究機関 | 独立行政法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
志村 まり 独立行政法人国立国際医療研究センター, その他部局等, その他 (90226267)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | HIV-1 / 染色体転座 / Vpr |
研究実績の概要 |
これまでに、Vpr安定発現細胞(48hr)によるmulti-FISH(23色)による、染色体数の異常および転座・挿入の有無について網羅的な染色体分析を行ったところ、コントロール細胞では転座数は全体の5%未満であったのに対し、Vpr発現細胞ではおおよそ30%に認められた。本年度は以下の内容に進展を認めた。 ① 染色体転座責任領域の解明: 一過性Vpr強発現細胞(48hr)での、染色体転座の有無を調べた。結果、新規な転座が観られる細胞は、mock transfection では7%増大したが、Vpr発現細胞では17%であった。また、puromycin選択を3~5日行った後の細胞についても、解析をおこなったが、むしろ転座細胞が減少傾向となった。② ヒストン修飾との関与:Vprはp300/HATを介してヒストンH3K9のアセチル化を誘導する。そこで、p300の活性阻害剤処置後、Vpr発現細胞に見られる染色体数の異常および転座・挿入の有無について網羅的に解析を行った。結果、転座細胞数は減少傾向となった。VprによるHP1の喪失、コヒーシン異常は、p300のクロマチン局在が原因を明らかにしている。転座機序でも、クロマチン蛋白質との関連は否めない。現在、再現性を得るための実験を行っている。③ 誘導時期:非同調下では、Vpr発現48時間で同じ転座が2本ある細胞は希であった。多くの細胞は1本であることから、転座はS期を越える前に起きているのではなく、G2/M~G0/G1で起きていると考える。 ④ 臨床検体: HIV-1感染B-細胞リンパ腫は悪性度が高く治療困難と称されている。そこで、腫瘍予備軍が存在すると考えられる感染者、また、HIV-1感染リンパ腫末梢血においてmFISHを施行し、染色体数の異常および転座・挿入の有無について網羅的に解析する。倫理審査を終了し、現在、1例目の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究を律速するのは、観察する細胞数を200まで増大したこと、染色体解析に時間がかかること、およびマンパワーであり、詳細解析に依る。
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今後の研究の推進方策 |
① Vprによる染色体転座:a)誘導時期:細胞周期依存性を明らかにする為に、G1/SもしくはG2,M期に同調したVpr発現を行い、染色体数の異常および転座・挿入の有無について網羅的に解析する。b)ヒストン修飾との関与:VprはヒストンH3K9のアセチル化を誘導する。ヒストンH3K9のアセチル化を誘導している因子の一つとしてp300/HATを報告している。そこで、p300RNAiやp300の活性阻害剤処置後、Vpr発現細胞に見られる染色体数の異常および転座・挿入の有無について網羅的に解析する。c)染色体転座責任領域の解明: 一過性Vpr強発現細胞(48hr)で増大が認められたので、DNA結合に関与しているC末欠損Vpr発現細胞での転座への影響を行う。 ② 臨床検体: HIV-1感染B-細胞リンパ腫は悪性度が高く治療困難と称されている。そこで、腫瘍予備軍が存在すると考えられる感染者、また、HIV-1感染リンパ腫末梢血においてmFISHを施行し、染色体数の異常および転座・挿入の有無について網羅的に解析する。現在、倫理審査申請中である。 ③ 数日HIV-1感染での転座検出は困難かもしれないが、ウイルス感染による染色体転座を明らかにしてみたい。
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