研究課題/領域番号 |
24501309
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鈴木 康弘 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (60332277)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Vasohibin / 上皮間葉転換 / 転移 / miRNA / 血管新生 / miR-200 / 癌悪性化 / 癌幹細胞 |
研究概要 |
Vasohibin-2(VASH2)の発現を特異的にノックダウンしたヒト漿液性卵巣癌細胞株DISS細胞では、コントロール株と比して、上皮間葉転換(EMT)誘導に寄与する転写因子ZEB2・SNAI2・TWIST1の発現が低下し、連動して上皮マーカーであるE-cadherinとβ-cateninの発現亢進と間葉系マーカーであるVimentinの発現低下が確認された。トランスウェルチャンバーを用いた解析から、VASH2をノックダウンすることによってDISS細胞の遊走能・浸潤能が抑制されることを見出した。ヒトVASH2 mRNAの3'UTR(終止コドンから1,817bp下流まで)を挿入したレポーターベクターを細胞に導入し、miRNA前駆体Pre-miR-200b添加によってレポーター活性が低下することから、VASH2mRNAの3'UTRがmiR-200bの標的であることを示した。抗体アレイ解析により、ヒト漿液性卵巣癌細胞株SKOV-3細胞によるケモカインMCP-1の分泌がVASH2ノックダウンにより顕著に抑えられることを確認した。ヒト小細胞肺癌細胞株SBC-3細胞のVASH2をノックダウンすることで、間葉系マーカーVimentin・N-cadherinの発現低下とともにアポトーシス・細胞老化・アミノ酸代謝・糖代謝に関連する遺伝子群が変動することをマイクロアレイ解析にて確認した。SKOV-3細胞を用いて肺転移実験を行ったところ、VASH2ノックダウンにより肺転移が抑制される傾向があった。胃癌発症モデルマウスにおいて、生後30週で発症した胃癌組織では、癌幹細胞マーカーCD44及びそのバリアントの発現と共に、VASH2の発現が増加することが確認された。以上の結果から、癌細胞・癌組織におけるVASH2の発現が、癌細胞のEMT・浸潤・転移等の癌悪性化に深く関わることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に計画していた実験を遂行し、癌細胞の上皮間葉転換(EMT)・浸潤・転移等の癌悪性化におけるVASH2の役割について新しい知見を幾つか見出すことができた。VASH2ノックダウンにより、EMT関連因子に加えて、アポトーシス・細胞老化・アミノ酸代謝・糖代謝に関連する遺伝子群の発現が変動することを確認した。またVASH2 mRNAの3'UTRが、EMT 抑制に働くmiR-200bの標的であることをレポーターアッセイで確認することができた。動物実験においても、肺転移の頻度や胃癌発症における癌幹細胞マーカーの発現とVASH2の関連性についても確認できた。以上のことから、本研究に関して現在までおおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
1)VASH2の発現によって変動する癌悪性化に関わる因子の探索とその相互の関係についてさらに解析を進めるとともに、様々な癌種での再現性を確かめる。VASH2の有無により変動があった因子については、順次siRNAを作製して癌細胞に導入しノックダウンすることによって癌悪性化に対する影響を調べていく。変動するmiRNAについても引き続き探索を行う。2)作製したレポーターベクターを用いて、ヒトVASH2 mRNA 3'UTR中のmiR-200b標的領域をさらに絞り込んでいと同時に、他のmiRNAによる影響についても調べる。3)VASH2のフラグメント蛋白や一部のアミノ酸を欠いた欠損蛋白を発現するプラスミドベクターを作製し、癌細胞に作用させることによってEMTや癌幹細胞マーカー等の発現レベルに変化があるかどうか調べる。4)VASH2高発現あるいはノックダウンした癌細胞株、VASH2の中和抗体、siRNA、ドミナントネガティブ変異体を癌移植モデルあるは胃癌発症モデルに用いることによって、腫瘍の成長、転移頻度、癌細胞のEMT誘導、癌細胞の浸潤、腫瘍内部の血管新生・リンパ管新生、マクロファージの動員などに対して影響があるかどうか調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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