研究課題
基盤研究(C)
日本人の卵巣癌の約25%を占める明細胞癌は、高い抗癌剤耐性を示すため予後が悪い。本研究では卵巣明細胞癌幹細胞を標的とした治療法を開発するための基礎研究を行う。我々は卵巣明細胞癌幹細胞を手術検体より濃縮し、無血清培地を用いて幹細胞様性質を維持したまま継代培養することに上皮性腫瘍で初めて成功した。この明細胞癌幹細胞は、癌幹細胞マーカーとして知られているCD133を強く発現している。5回膜貫通型の糖蛋白質であるCD133は、様々な正常および腫瘍組織の幹細胞マーカーとして報告されているが、その分子機能は明らかにされていない。DNAマイクロアレイデータを解析した結果、CD133は卵巣明細胞癌において発現が亢進していることを見出した。さらに、CD133の発現を抑制した明細胞癌幹細胞の腫瘍形成能が低下することを明らかにした。これらの結果からCD133が明細胞癌幹細胞において重要な役割を担っていると考え、内在性CD133複合体の解析を行った。その結果、細胞接着装置デスモソームの構成因子plakoglobinがCD133複合体に含まれていることを見出した。さらに、CD133の発現を抑制するとdesmoglein-2の発現量が低下することにより、デスモソームの形成が阻害されることを見出した。Desmoglein-2は様々な悪性腫瘍で発現亢進が認められることから、CD133がデスモソーム形成を介して明細胞癌幹細胞の腫瘍形成能維持に寄与している可能性が考えられた(Koyama-Nasu et al, PLoS One 2013)。
2: おおむね順調に進展している
CD133がデスモソーム形成を介して細胞接着を正に制御していることを明らかにし、CD133およびdesmoglein-2が卵巣明細胞癌幹細胞に対する治療標的になる可能性があることを見出した。さらにCD133の発現を指標としたRNAiスクリーニングが進行中である。
CD133の発現を指標としたRNAiスクリーニングにおいて取得した候補遺伝子を中心に研究を進める。具体的には、レンチウイルスを用いてshRNAを導入することにより標的遺伝子の発現を抑制した卵巣明細胞癌幹細胞を免疫不全マウスに移植し、腫瘍形成の低下を確認する。さらにマイクロRNAの網羅的スクリーニングも行う。
卵巣明細胞癌幹細胞を用いたRNAiスクリーニングを行うための培地、増殖因子、抗体等、およびスクリーニングで取得した種々の遺伝子の発現コンストラクトの作製に必要な酵素、primer、transfection試薬、siRNA等に使用する。種々の遺伝子を強制発現または発現抑制した癌幹細胞の腫瘍形成能を解析するために必要な免疫不全マウスと、抗体の作製に必要なウサギに使用する。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)
PLoS One
巻: 8 ページ: e53710
10.1371/journal.pone.0053710
Oncogene
巻: - ページ: -
10.1038/onc.2012.399
Current Topics in Peptide & Protein Research
巻: 13 ページ: 1-47
PloS One
巻: 7 ページ: e43398
10.1371/journal.pone.0043398