研究課題
平成25年度では、新たにマウスルイス肺がんの分泌するエクソソームを用いてiPS細胞からがん幹細胞の作製をおこなった。がんの分泌するエクソソーム存在下で培養したiPS細胞はヌードマウスに移植すると、脂肪肉腫様の腫瘍を形成した。これまでに作製していたがん細胞株の培養上精を用いてマウスiPS細胞より誘導したがん幹細胞株(癌腫様)に加えて、低分子化合物による生育阻害効果検証の対象細胞として使用した。一方で、iPS細胞から作製したがん幹細胞、及びそれより分化したがん細胞の分泌する因子が、がん幹細胞の自己複製、分化を制御しており、がん幹細胞が自ら、自身の運命をコントロールする微小環境を形成していることを明らかとした。この知見に基づき、低分子化合物のがん幹細胞の生育阻害効果の検証では、がん幹細胞ニッチを模倣するため、iPS細胞由来がん幹細胞、及びその分化がん細胞(miPS-CSC細胞)の培養上清を添加する系を構築した。前年度までにスクリーニングで得られた候補化合物(バフィロマイシンA1、ダウノルビシン)の生育阻害効果を9種類のmiPS-CSC細胞に対して精査し、両薬剤の各々の細胞に対するIC50値を求めた。両薬剤はmiPS-CSC細胞に対して数nMから数10nMの濃度で生育阻害効果を示したことから、抗がん幹細胞薬として有望と考えられた。また、表面抗原遺伝子を中心としたDNAマイクロアレイ解析を行い、miPS-CSCに共通して発現する遺伝子の検索を行い、これまでに数種類の候補遺伝子を抽出した。
2: おおむね順調に進展している
本年度までに、癌腫様のがん幹細胞、肉腫様のがん幹細胞をマウスiPS細胞から作製している。その中でmiPS-LLCcm(マウスルイス肺がん細胞株の培養上清を使用してがん幹細胞化)を使用して190種の低分子化合物より、miPS-CSC細胞の生育を効果的に祖顔する薬剤2種類を得ている。これらの薬剤は、本研究で作製している一連のmiPS-CSC細胞に共通して有効であることを見いだしている。また、がん幹細胞標的化に使用する細胞表面蛋白質の遺伝子についてのDNAマイクロアレイを行い、標的候補となる遺伝子を数種類得ている。本年度までに、がん幹細胞を標的とするDDS開発に向けた薬剤、標的遺伝子候補が得られており、本研究の目的達成にむけて、おおむね順調に進展している。
これまでのスクリーニングで得られた薬剤は、リポソーム等を利用したドラッグデリバリーシステム(DDS)へ応用していく。ダウノルビシンの類自体であるドキソルビシンは既にリポソーム化されており、その系を利用する。これらを用いて、in vitroでのがん幹細胞に対する薬効評価系を構築し、評価する。一方で、標的遺伝子については、正常組織でのその発現を確認し、がん幹細胞で有為に高発現している遺伝子を選択していく。また、ヒトがん細胞株でのこれらの候補遺伝子の発現を検証する。また、特異的抗体が利用可能である場合は、イムノリポソームの作製を試み、がん幹細胞を標的とするDDS製剤のプロトタイプの作製を試みる。
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International Journal of Cancer
巻: 135 ページ: 27-36
10.1002/ijc.28648.