研究課題/領域番号 |
24501317
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
窪田 直子 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (40569810)
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研究分担者 |
佐藤 正宏 鹿児島大学, 医用ミニブタ・先端医療開発研究センター, 教授 (30287099)
野口 洋文 岡山大学, 医学部, 研究員 (50378733)
齊藤 一誠 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (90404540)
稲田 絵美 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (30448568)
齊藤 陽子 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (30404487)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 癌幹細胞 / Oct-3/4 / 遺伝子工学的処理 |
研究概要 |
いくつかの癌には増殖性が高く、多分化能を有する癌幹細胞(cancer stem cell; CSC)と呼ばれる細胞集団が存在する。通常、CSC は CD133, CD44 等比較的発生の後期に発現する分子をマーカーとして単離される。一方、未分化細胞特異的転写因子 Oct-3/4 は、遺伝子カスケードの観点からこれらマーカーの上位に位置し、発生のごく初期から発現し始め、様々な遺伝子を支配するマスター遺伝子とされる。しかも、Oct-3/4 は成体組織の体性(組織)幹細胞にも発現する。この観点から、真の CSC マーカーは Oct-3/4 の下流に位置するCD133、CD44等ではなく、Oct-3/4であると考えた。本申請はヒト膵臓癌細胞株を用いてこの仮説を検証することを目的とする。 方法としては、Oct-3/4陽性細胞と陰性細胞との集団から成るヒト膵臓癌細胞株PANC-1に着目し、それに遺伝子工学的処理を加え、Oct-3/4陽性株と陰性株を得る。次いで、in vitroでの細胞の増殖性、分裂様式、多分化能性、in vivoでの造腫瘍性、抗癌剤への抵抗性等を検討し、Oct-3/4陽性株がCSCとしての特徴を備えることを見出す。加えて、逆遺伝学的手法を用い、Oct-3/4レベルの増減がCSCの特性に影響を与えるかどうかを検討する。 平成24年度では、PANC-1細胞を用いて幾つかの検討を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PANC-1細胞について、RT-PCR解析を行ったところ、Oct-3/4 mRNA の発現が認められた。さらに、体性(組織)幹細胞やES/iPS細胞のような極めて幼弱な未分化細胞にも発現するアルカリホスファターゼ(ALP)の発現も認められた。一般的にCSCは癌細胞中では数%しかなく、CSCと非CSCとが混合した、いわゆるモザイク状態にあるものと考えられる。そこで、細胞化学的手法を用い、PANC-1細胞でのOct-3/4とALPのモザイク的発現状況を検討した。PANC-1 細胞のanti-Oct-3/4 抗体を用いた免疫細胞化学的染色では、23%が Oct-3/4 陽性であった。また、ALP染色では、19%がALP陽性だった。しかし、CSCの特性の一つであるHoechst 33342 による弱い染色性(Hoechst 33342を細胞外に排出する活性が弱いことを意味する;CSCは通常その排出活性は高いとされる)は見られなかった。 一方、Oct-3/4陽性PANC-1 細胞を単離すべく、PANC-1 細胞に環状pOEIN プラスミド(マウスOct-3/4 プロモーター + EGFP cDNA + poly(A) sites + インスレーター + neomycin耐性遺伝子発現ユニットを内蔵)を遺伝子導入した。その結果、ごく一部であるが、EGFP 蛍光を示す細胞が確認された。これはPANC-1 細胞の一部は内在性の Oct-3/4 を機能的に発現しており、未分化性の細胞質因子がpOEIN の Oct-3/4 プロモーターに作用し、その下流に位置する EGFP を発現させたと解釈され 以上から、ヒト膵臓癌細胞株の集団中には真のCSCと目される Oct-3/4 発現細胞(およびALP陽性細胞)が少数ながら存在することが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
Oct-3/4陽性PANC-1 細胞を単離すべく、直鎖化 pOEIN プラスミドをPANC-1 細胞株へ遺伝子導入する。遺伝子導入後、neomycinのアナログであるG418で細胞を選別すると、pOEIN を自らの染色体に組み込ませた細胞(Oct-3/4陽性細胞と期待される)のみが淘汰されるため、Oct-3/4陽性PANC-1 細胞を大量に取得できると見込まれる。一方、Oct-3/4陰性で、RT-PCR解析でもOct-3/4の発現がない細胞をOct-3/4陰性細胞(コントロール)として取得する。両者について、増殖性、分裂様式、造腫瘍性などを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費使用計画は以下の通りである。 物品費:遺伝子工学実験、細胞工学実験に伴う細胞培養試薬、分子生物学用試薬や動物購入などの消耗品は、本研究遂行上必須である。 旅費:国内の各種学会への発表・参加するための旅費と資料収集や新潟大学への研究打ち合わせのための旅費も計上している。 謝金:免疫組織化学、H-E染色、RT-PCR解析等は、その経験がある大学院生に補助をお願いする予定である。また、論文作製のため論文の校閲とジャーナルへの論文投稿費を計上している。
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