研究課題/領域番号 |
24501321
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
出口 敦子 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (10422932)
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キーワード | 微小環境 / 肝転移 / 大腸癌 |
研究概要 |
本研究は、大腸癌が転移する前の段階で、肝臓に形成されるToll様受容体を介した炎症惹起による微小環境構築の分子機序を解明し、転移性癌予防や転移性癌治療法の開発のための分子標的を提案することを目的とする。 この目的のために、前年度では、同所移植担癌マウスの転移前肝臓から抽出したRNAを用いたDNAマイクロアレイ解析により、発現が顕著に上昇したケモカイン様タンパク質に着目し、ケモカイン様タンパク質による肝転移促進能と検証した。精製リコンビナントタンパク質をマウスに連日投与した後、蛍光標識マウス大腸癌細胞を移植すると、肝臓への転移が亢進することを見いだした。本年度は、前年度の実験結果をふまえ、以下の実験結果を得た。候補因子であるケモカイン様タンパク質に対するレセプター欠失マウスにマウス大腸癌細胞を移植すると野生型マウスに比べ、生存率が改善する可能性を示唆した。また、転移前微小環境の臓器間特異性について検証するために、肺における制御因子である血清アミロイドA3 (SAA3)によるToll様受容体4(TLR4)/MD-2活性化の分子機序について解析を行い、SAA3のTLR4/MD-2活性化には、MD-2が必須であり、SAA3(43-57)が結合に関与していることを見いだした。また、SAA3 (43-57)ペプチドをマウスに尾静脈経由で投与すると、肺におけるCD11bGr1陽性細胞の集簇が亢進することを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、大腸癌が転移する前の段階で、肝臓に形成されるToll様受容体を介した炎症惹起による微小環境構築の分子機序を解明し、転移性癌予防や転移性癌治療法に対する分子標的を提案することを目的としており、候補因子ケモカイン様タンパク質投与実験や、レセプターノックアウトマウスの解析により、本ケモカイン様タンパク質が肝転移を亢進する可能性を見いだしている。また、転移前肺微小環境に関わるSAA3のTLR4/MD-2に対する結合領域を特定することができ、来年度解析を予定している臓器決定能の解析に新たな知見を得ることができたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1. 肝転移前微小環境形成による肝転移促進の分子機序 前年度までに、候補因子ケモカイン様タンパク質が肝転移を促進する可能性を見いだしている。候補因子ケモカイン様タンパク質による転移能の亢進が臓器特異的であるかを、入手可能なマウス癌細胞を用いてさらに検証する。候補因子の肝臓特異性が得られた場合には、転移前肝微小環境に存在する間質細胞や集簇した免疫担当細胞について、特異的な抗体を用いて免疫組織学的またはフローサイトメトリーにより解析を行う。 2. 初代培養肝細胞を用いたin vitro微小環境による解析 マウス正常肝臓からコラゲナーゼ還流とPercoll 密度勾配遠心分離、CD146マイクロビーズやCD11bマイクロビーズを用いることにより、肝細胞と類洞内皮細胞、未分化骨髄球を単離する。単離した初代培養細胞を用いて、肝細胞シート、類洞内皮細胞シートを積層化することにより、in vitroにおいて肝臓内微小環境を構築させる。構築した in vitro肝臓内微小環境内に精製した候因子を添加した際の微小環境の構造学的もしくは分子レベルの変化を、基底膜特異的マーカーを用いて免疫組織学的手法にて染色を行い、共焦点顕微鏡により検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
必要試薬の単品の価格が予算を上回り、次年度、他の必要試薬や消耗品の購入に使用する予定である。 試薬や消耗品購入の一部として使用する。
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