研究課題
本研究は、大腸がん同所移植肝転移マウスモデルを用いて、転移する前の段階において、肝臓で形成されるToll様受容体を介した炎症惹起による微小環境構築の分子機序を解明し、転移性がん予防や治療法の開発のための分子標的を提案することを目的とする。前年度までに、マウス大腸がん同所移植担がんマウスの転移前肝臓から抽出したRNAを用いたDNAマイクロアレイ解析を行い、発現が顕著に上昇したケモカイン様タンパク質を転移前肝微小環境形成における候補因子とした。さらに、高純度精製ケモカイン様タンパク質投与により、肝臓への転移が亢進することを見いだした。本年度は、前年度までの実験結果をもとに、以下の実験結果を得た。1. Toll様受容体依存性NF-κBレポーター細胞をケモカイン様タンパク質にて刺激すると、ケモカイン様タンパク質はToll様受容体依存性のNF-κB活性を上昇させたことから、内因性リガンドになり得ることが示唆された。また、 ケモカイン様タンパク質に対するToll様受容体欠失マウスでは、マウス大腸がん細胞を移植すると野生型マウスに比べ、生存率が改善したことから、ケモカイン様タンパク質はToll様受容体を介してがんの増悪化に関与していることが示唆された。2. 転移前微小環境の違いによる転移先決定能を検証するため、前年度に解析を行った、転移前肺微小環境に関わる血清アミロイドA3 (SAA3)に追加して、S100A8によるToll様受容体4(TLR4)/MD-2活性化の分子機序について解析を行い、結合部位を同定した。以上、本研究により、転移前肝臓に形成される微小環境を制御する候補因子として注目したケモカイン様タンパク質がToll様受容体を介して肝転移を促進する可能性を示唆した。
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Endocrine Metabolic and Immune Disorders-Drug Targets
巻: 2 ページ: 未定
実験医学増刊 がん微小環境と標的治療
巻: 33 ページ: 155-159
http://www.twmu.ac.jp/Basic/yakuri/paper.html
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