研究課題/領域番号 |
24501322
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
角田 俊之 福岡大学, 医学部, 准教授 (70444817)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | KRAS / フィールドエフェクト / 大腸がん / 3次元培養 |
研究概要 |
申請者らはこれまでにヒト大腸癌HCT116細胞において活性化KRASのみを破壊したHKe3細胞を用いてマトリジェル3次元培養を行うと、経時的な解析よりin vivoにおける大腸クリプト様の増殖様式を示し、最終的に極性構造が誘導された状況下と比べると、変異KRASが存在する場合はp53,BRCA1などのDNA 修復関連遺伝子の発現低下、内腔のアポトーシスの阻害などの3次元環境特異的なKRASによる造腫瘍シグナルが存在することを突き止めた。3次元培養した癌細胞はその他にも多くの3次元特異的分子を発現しており、H24年度は、その中のひとつとして大腸癌で発現が上昇するPDE4を3次元培養した大腸癌細胞株において、ロリプラムを利用し阻害することにより、AKTのリン酸化抑制、および、アポトーシスが誘導されること(Mol Cancer, 2012)、3次元モデルでALPK2の発現を低下させると、アポトーシスが顕著に阻害されることを明らかにした (AntiCancer Res, 2012)。さらに、KRASが3次元特異的に上方制御するmiRNAとして、新たにmiR-181,miR-210を同定した(AntiCancer Res, 2012)。 このようにいままで検知することが難しかった正常構造に関連する遺伝子を含めた3次元特異的KRAS制御分子ネットワークの解明は、間質や他の細胞との相互作用を理解する上で重要であり、将来的にKRASの変異を有する腫瘍に対して最も効果が高くかつ、毒性の少ない特異的な分子標的を同定することならびに分化誘導療法の開発にもつながると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画では3次元特異的な変異KRASによるフィールドエフェクトを最終的に解明することを目的としており、計画している具体的な研究項目は、①3次元特異的に活性化KRASが制御する遺伝子群の発現メカニズムの解明。②間質、免疫担当細胞と大腸癌3次元細胞との共培養系においてKRAS変異および下流分子の有無による変化の検討。③変異KRASを有する大腸癌症例を用いたフィールドエフェクト関連遺伝子群の発現パターンと免疫担当細胞などの分布パターンおよび予後解析。①に関してはH24年度には、3次元特異的にKRASにより上方制御されるPDE4, miR-181,miR-210, 下方制御されるALPK2に関する論文を発表し、達成度としては30~40%である。②に関しては現在解析を進めており、③に関しては臨床検体を現在集めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに同定してきた3次元特異的KRAS制御分子の臨床検体組織切片で使用可能な抗体の最適化を検討すると同時に免疫機構に関連する新たな3次元特異的KRAS制御分子も同定していく。またフィールドエフェクトの解析に関してはHCT116細胞またはHke3細胞にの培養上澄中のエクソソーム中のmicroRNA解析,また骨髄間質細胞OP9-GFPとの共培養系を確立し、化学療法のなどにより担癌状態が長期化することで近年増加傾向にある骨転移の機構をフィールドエフェクトという視点から解析する。最終的には大腸癌パラフィン切片における3次元特異的変異KRAS制御遺伝子,免疫担当細胞を特異抗体にて免疫染色し、臨床病期、染色部位などとの関連解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
抗体、細胞培養関連試薬(培養液類、添加精製蛋白など)、遺伝子工学関連試薬 (PCR酵素、制限酵素など)、蛋白解析試薬(Western試薬・ECLなど)、プラスチック消耗品(チップ・dish・遠沈管など)の 計150万円を計上している。3次元培養、ウェスタンブロット、免疫染色などに使用予定である。
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