研究課題/領域番号 |
24501322
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
角田 俊之 福岡大学, 医学部, 准教授 (70444817)
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キーワード | KRAS / 3次元培養 / フィールドエフェクト / 大腸癌 |
研究概要 |
申請者らはこれまでにヒト大腸癌HCT116細胞において活性化KRASのみを破壊したHke3細胞を用いてマトリジェル3次元培養を行い、3次元培養では変異KRASは正常形態に関連する遺伝子群を制御していることを明らかにし、実際にHCT116細胞隗はいびつな形態を示すのに対しヒト大腸癌細胞株HCT116より変異KRASのみを相同組み換えにて欠失させたHKe3細胞は大腸クリプト様の極性を有する形態を示す。この両者を発現アレイにて解析すると3次元環境特異的に変異KRASにより制御されている遺伝子群が存在し、H24年度はPDE4やALPK2およびmiR-181やmiR-210等に関して報告してきた。このように正常構造に関連する遺伝子群を含めた3次元特異的なKRAS制御分子ネットワークの解明は、間質や他の細胞との相互作用を理解する上で重要であり、 H25年度は、より簡便で再現性の高い3次元浮遊細胞の系を採用し、解析を進めている。浮遊細胞隗はマトリジェルを使用しなくてもそれ自身が細胞隗周囲に間質成分を産生し、周囲の培地組成を調節することで、間質を介した影響等の評価が可能である。将来的にはハイコンテントな解析をよりハイスループットに行うことが可能であり、HKe3細胞に対して影響がなくHCT116細胞においてのみ効果を示すような薬剤を選択することで、より毒性の少ない変異KRASの下流分子の同定およびその阻害剤の評価が可能になると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画では3次元特異的な変異KRASによるフィールドエフェクトを最終的に解明する事を目的としており、計画している具体的な研究項目は、①3次元特異的に活性化KRASが制御する遺伝子群の発現メカニズムの解明。②間質、免疫担当細胞と大腸癌3次元細胞との共培養系においてKRAS変異および下流分子の有無による変化の検討。③変異KRASを有する大腸癌症例を用いたフィールドエフェクト関連遺伝子群の発現パターンと免疫担当細胞などの分布パターンおよび予後解析であるが、①に関してはH24年度までに3報の論文を発表し、現在PDE4の阻害剤の効果について論文を投稿し受理されている。②に関しては国立がん研究センターとの共同研究により、EGFR阻害剤の生体内でのエフェクター細胞を介した障害性への耐性獲得に、変異KRASが関与することを新たに明らかにし(Int J Cancer. 2014 May 1;134(9):2146-55)、変異KRASの免疫担当細胞に対するフィールドエフェクトであることが考えられた。現在より簡便で定量性のある3次元浮遊培養によるシステムを新たに構築し、T細胞、活性化マクロファージとの共培養系による解析を予定している。 ③に関しては膵臓癌にも症例を広げ、解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年に引き続き、臨床検体を含めた解析を行い。3次元特異的に変異KRASが制御する分子に関して解析する。しかし、今後はこのような分子の阻害剤の細胞隗そのものに対する作用機序を解明することが、今後のフィールドエフェクトも含めた癌の進展機構を解明することにおいて重要であることが明らかになりつつあり、より最適なスクリーニングシステムを構築しつつ、阻害剤や免疫担当細胞の細胞隗そのものに対する殺傷効果などの評価を行い、今後の解析の基盤を構築していく。
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